プロ棋士である作者は、家族とたのしく外食した翌日から急に体調を崩す。体調不良は仕事である将棋の対局にも影響を及ぼすようになり、やがて死のイメージに取り憑かれる。精神科医である実兄が「立派なうつ病」であると説得、ようやく作者は精神神経科に入院する。
本書は、うつ病の発症からなんとか回復するまでの本人による記録である。うつ病は心の病ではなく、脳の病気だと医師の兄は言う。心の強さ弱さが原因ではなく、脳の異常である。だから「必ず治ります」と、兄はたった一行のラインを作者に送り続ける。
喜怒哀楽を感じなくなり、眠れなくなり、ネガティブな考えに陥る。そこから少しずつ、できることが増えていく。エロ動画を見る、喫茶店にいく、看護師と将棋を指す。とはいえ、それはぜんぜん回復ではない。退院し、兄に言われたとおり毎日散歩に出る。散歩とはいえ本人にとっては苦行でしかない。ゾンビのように外に出て、勇気を出して図書館までいき、ありったけの勇気を出して繁華街にいく。「必ず治ります」の一言を杖のようにして、作者は止まらず、歩き続ける。
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