一九八〇年代はじめ、各地の将棋大会を席巻した「恐怖の赤ヘル少年」。雑踏のなかでも、母親に見つけられやすいようにと、真っ赤な広島東洋カープの帽子をかぶった小柄な少年は、瞬く間に将棋界で頭角を現していきます。
一九八二年に小学生名人戦に優勝すると、同年、プロ棋士の養成機関・奨励会に入会。そして、天才少年ばかりが全国から集まる厳しい競争をわずか三年で勝ち抜き、史上三人目の中学生棋士となったのです。羽生善治、このとき十五歳。
一九八九年に史上最年少(十九歳)で初タイトルの竜王を獲得すると、破竹の勢いで勝ち進み、一九九六年二月十四日、七大タイトル独占という前人未到、空前絶後の大記録をうち立てます。二十五歳、プロデビューからわずか十年での大事件でした。
あれから二十年、羽生さんは、若き俊英が陸続と台頭する斯界にあって、第一人者の座に君臨しています。頭脳アスリートとしてのピークを三十代だとすると、驚異的なことです。
その卓越した思考力、勝負力、発想力、人間力、持続力は何処から湧き出るのか――。
三十年にもわたり勝負と格闘してきた日々から生まれた彼の言葉は、将棋の枠には収まりきらない深い含蓄に満ちています。
本書には、ビジネスにも役立つ〈羽生流〉の発想のヒントが詰まっています。
(「はじめに」より)
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