小川 で、南半球の人々が、何が何でも生き残ってやるぞ、と骨肉の争いをするというよりは、わりと静かに滅びていく。アクションが少なめで、どこか淡々とした感じが、今の日本の状況と重なり合うかもしれない。
円城 危機に対してバリバリ戦う話って、今一つ読み返す元気が起きませんでした。例えば、小松左京の『復活の日』(角川文庫)は、今読むと臨場感があるに違いないのだけど、体力がついていかないので読めない。それよりも、外を見て「桜がきれいだな」とか思いながら『渚にて』を読んでいるほうが、体に入ってきます。その話で行くと、ベン・H・ウィンタースの『地上最後の刑事』(ハヤカワ・ミステリ文庫)とかもその系譜かも。あれは、小惑星が迫ってきて地球に当たるよ、もう駄目だ、みんな死ぬ! という話ですが、そういう極限状態にありながらも、主人公は刑事だから、小惑星とか関係のない事件を淡々と追い続けているんですよね。脅威が迫っているけど、描かれているのは日常。ああいう話のほうが、気分ではありましたね。
小川 『復活の日』は、このウイルスをどうやって退治するか、どうやって人類はウイルスに立ち向かっていくか、みたいなところが話のメインになるわけで、必然的に戦う場面が多くなる。でも、『渚にて』や『地上最後の刑事』は、何をやったところで世界が滅びてしまうことは決まっていて、最悪の事態を避けるために何かする、という話でもないから、普通のパニックものとかとはだいぶテイストが違ってくるのは当然ですよね。
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