円城 そういえば最近、リチャード・プレストンの『ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々』(ハヤカワ文庫)が復刊されましたけど、あれって一九九四年刊だったんですね。もっと昔に出たものだと思い込んでいて、エボラって意外と最近の話だったんだなと驚きました。あの本が出たくらいから、みんなエボラ、エボラ言うようになって、パンデミックを扱った作品が増えていった印象があります。みんな『ホット・ゾーン』と混同してしまいがちな、ウォルフガング・ペーターゼン監督の映画『アウトブレイク』も同時期でした。
描き方のフォーマット
小川 率直に思ったのは、SF作家がデザインしたウイルスが、全世界、あるいはある特定の地域で流行して人類が窮地に立たされる――みたいなフォーマットの小説って、思っていたほどたくさん数があるわけではない。
円城 実は書きにくい。
小川 だから、いざ挙げてみろと言われると、近年の作品だとゾンビものばかりになってしまう。
円城 あるいはノンフィクション系か。
小川 それこそ、さっき挙げたジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』なんかは、その系譜としても読めますね。
(五月二十九日、Zoomにて収録)
構成 辻本力
えんじょう・とう 一九七二年生まれ。二〇〇七年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞、一二年「道化師の蝶」で芥川賞、一七年「文字渦」で川端賞を受賞の他、受賞多数。他の著書に『プロローグ』『シャッフル航法』など。
おがわ・さとし 一九八六年生まれ。二〇一五年「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテストにて大賞を受賞してデビュー。一七年の『ゲームの王国』で日本SF大賞、山本周五郎賞を受賞。他の著書に『嘘と正典』がある。
この続きは、「文學界」8月号に全文掲載されています。
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