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対談 円城塔×小川哲 いまディザスター小説を読む<特集 “危機”下の対話>

対談 円城塔×小川哲 いまディザスター小説を読む<特集 “危機”下の対話>

円城 塔 ,小川 哲

文學界8月号

出典 : #文學界

「文學界 8月号」(文藝春秋 編)

翻弄される時代から戦う時代へ

 円城 伝染病との戦いというのは、結構歴史が長いんですよね。例えばペストは、最初の世界的な流行が六~八世紀にあって、その後も一四~一八世紀にかけて、実に四〇〇年くらい苦しめられることになる。と思ったら、一九世紀になると、今度はコレラが流行り始める。さらに、二〇世紀に入るとインフルエンザが来ます。第一次世界大戦とインフルとを合わせて、一億人くらい死んだとか死なないとかいう話があります。そうこうしているうちに、今度はエボラウイルス、HIVといった、急に出てくるタイプの、いわゆるエマージング・ウイルスの時代に。ただ、呼び名がなかっただけで、病原体自体は紀元前からいたんですよ。

 小川 つまり、人間と出会ってなかっただけ、と。

 円城 一九世紀末、二〇世紀初頭くらいから「これは細菌のせいだ」「ウイルスのせいだ」と盛んに言い出したわけですが、遡って考えると、パンデミックみたいな形で認識されてなかっただけで、実はウイルスが原因でバタバタ人が死んでいた。でも、現生人類が何万年と居続けている中で、新型のウイルスが二〇~二一世紀に集中しているのは何なんだろうな、というのはあります。

 小川 やはり、動物と接する機会が増えたからでしょうか。基本的に人間が苦しめられているウイルスって、動物から来ていることが多い。一九九八年にピューリッツァー賞を獲ったジャレド・ダイアモンドのノンフィクション『銃・病原菌・鉄(上・下)』(草思社文庫)では、人間が畜産を始めたことによって動物と家畜とが密に関わるようになって、そこからいろんな病気が生まれた、と説明されています。確かに、新しいウイルスが出てくる頻度がかなり高くなっているのは気になりますね。ちょっと前にSARSがあったばかりで、この新型コロナウイルスですから。このいたちごっこな状況は、けっこう怖いです。

文學界 8月号

2020年8月号 / 7月7日発売
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