従業員の平均年齢は七十二歳だという。
出勤初日。早朝七時。借りているアパートから自転車で十分も掛からない距離にある職場に到着した。イチョウ並木が続くなだらかな坂に面して建つ、この地域では一番大きい総合病院。近所なので、何度もその巨大で長大な建物の前を通り過ぎたことはあったが、幸いなことに医者の世話になるような大病に罹ることはなかったので、足を踏み入れるのは初めてだった。あらかじめ伝えられていた地下一階の事務所で挨拶し、支給された灰色の作業ユニフォームに着替え、朝礼に参加した。
親よりも歳上である同僚たち。彼らは雁首揃え、新参者である私の目前で整列していた。当日のシフトは、私を除いて男性が一人と女性が六人と伝えられていたが、顔だけを見れば全員がお爺さんに思えた。赤ん坊が、その顔だけでは性別判断が難しいように、顔つきだけを見れば老人たちの大半は背の低い男性に見えた。向かって右端の人物など、相撲部屋の親方のような顔つきをしている。それに誰もが灰色の作業着を纏っていることもあり、高齢の受刑者集団に思えてならなかった。おまけに、カメムシの放屁と古くなった石鹸にシナモンの香りを混ぜたような独特の臭いが、絶え間なく鼻先に届いていた。
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