親子だからって仲良くないといけないのか? これはずっと自分に問い続けている永遠に答えの出ない問題です。仲がいいに越したことはないし、家族なら助け合っていくべきだとも思います。でも、「少しだけ似てる世代の違う人間が強制的に同居している」ということを考える(親からしたら手塩にかけて育てた子ども、でも残念ながら大切にされているとひしと感じたことはない)と、わたしにとって家族とは、適度な距離を保って、たまに連絡するぐらいがちょうどいい関係なんだと思うようになりました。
『猫を棄てる』の帯には、「時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある」とあります。まさしくわたしにとって、今この本を手にし、今日読んだことが、「自分が、自分の父親について語るとしたらどうなるだろう?」と考えるきっかけとなりました。思い出したくないことが多くて仕舞い込んでいた過去に少し目を向け、恥ずかしい過去を細かく書き連ね、忘れていたことに気づき、いま父や家族に対し新たな感情を抱いています。
当たり前のことだけれど、親がいなければ私はこの世に存在せず、大好きな音楽も聴けず、恋人と会うこともなく、村上春樹の本を読むことも出来なかった。そして、わたしはやはり、少し身勝手で親の気持ちをわずかばかりも汲めない、不完全な子どもだった。
この本は、当たり前の事実に隠されたたくさんの奇跡的な出来事に気づかせてくれます。とても静かに。生きることと死ぬこと。当たり前だけど分かってないことが多いから、わたしは一気にこの本を読んでしまったのだと思います。そしてそれはわたしだけじゃないはずです。
〈一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある〉――私のこの小さな歴史を、誰に受け継いでいけばいいのか今は分かりません。ここに書いたように、家族にいい思い出のないわたしは、子どもをつくりたいという気持ちが希薄です。でも、誰かの記憶に残るような生き方をしなければ、と思います。
それよりもまずは、次に父に会ったとき、わたしが無視し続けても決して言うのをやめなかった父の「おはよう」に、きちんと「おはよう」と答えたいです。
SAKO ASAMI https://note.com/miimiimii
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『皇后は闘うことにした』林真理子・著
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