これは、戦後に日本で作られた戦争映画の変遷を追った一冊です。
戦争に敗れ、それまでの国家観や価値観を根底から否定された国で、映画製作者たちはどのような想いを抱いて戦争と向き合ってきたのか。そして、そのスタンスは時を経てどのように変化したのか──。できるだけ多くの作品を取り上げ、できるだけ多くの製作者たちの声を拾い上げながら、検証しています。
日本の戦争映画は、少しでも軍人を格好よく描いたり娯楽性を盛り込めば、左派から「あれは戦争を美化している」。日本軍の行いを批判的に描いたり軍の非人間性を訴えかければ、右派から「あれは左翼のプロパガンダだ」。戦後すぐから現在に至るまで、左右双方からの批判に付きまとわれてきました。
本書は、そうした思想信条ありきの論評はしません。ニュートラルな視点から戦争映画と向き合い、戦後五十年の変遷を俯瞰して検証することを目指しています。そして、検証しているのは、あくまで「映画」であり「映画の作り手」です。「戦争そのもの」ではありません。
そのことをご理解いただいた上で、あらかじめお断りしておきたいことが二点あります。
一つ目は、書き手である私の視点です。
本書の目的は戦争映画の変遷を追い、作り手の意識について掘り下げることです。作り手たちはそれぞれに、さまざまなスタンスで戦争映画に臨んでいます。ある事象に対して、肯定的な者もいれば、否定的な者もいます。美化して描くこともあれば、批判的に描くこともあります。個人の体験に根差していることもあれば、思想信条を強く盛り込むこともあり、会社の方針に従って──ということもあります。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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