なぜそのようなスタンスに至ったのかを探り、その結果として生まれた各作品の変遷をできるだけ幅広く網羅して取り上げ、掘り下げることを本書の目的としています。そのためには、ニュートラルな立ち位置を心掛け、公平性を意識して各作品・各人と向き合い、個々の想いにできるだけ寄り添おうとする必要があると考えます。一方の思想信条に自身が寄り過ぎてしまっては、見えてこないもの、届けられないものがある。それが、私の本書を書くに当たっての基本理念です。
作り手の戦争映画への向き合い方にはそれぞれに違いがあり、そのことが作品ごとに微妙なグラデーションを生んでいます。この本では、そのことを伝えたい。イデオロギーで切っては二色にしかならず、グラデーションが見えてきません。
そして二つ目は、本書で検証するのはあくまで、作り手たちが戦争といかに向き合い、戦争をどう描いてきたか、ということです。
そのため、本書に書かれているのは「映画内の作品描写としての戦争」になります。その内容は結果として「史実」と異なる場合も多々あります。くれぐれも、本書に出てくる映画の展開や描写について、「そうか、史実はそうだったのか」と思い込むことも、「史実はそうではない!」と目くじらを立てることも、ご遠慮いただきたく思います。
暗くて辛気臭いと思われがちな日本の戦争映画ですが、作り手たちの多くは、思想信条だけでは捉えきれないさまざまな想いや情念をぶつけてきました。バリエーションは実に豊か。それらに触れながら、戦争映画を見直すキッカケにしていただけましたら幸いです。
(「はじめに」より)
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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