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ウィズ・コロナ時代の伝統芸能(3)ナイツ(漫才)

ウィズ・コロナ時代の伝統芸能(3)ナイツ(漫才)

聞き手:生島 淳

オール讀物8月号

出典 : #オール讀物

 今回、特徴的だったのは、舞台でネタを披露することが出来なくなった芸人が、一気にYouTubeに参入してきたことだった。もともと土屋は消しゴムとノック式のボールペンを使った「消しゴムサッカー」でリーグを運営し、それをYouTubeで配信してきた。

「去年から始まったリーグが、六月でようやく終わりました!」とラジオで興奮気味に語っていたが、「“消しサカ”は本当に自分の趣味のためのチャンネルですから」と決めて、漫才ネタなどは動画では流さない。対して塙は、「ナイツ塙の自由時間」というチャンネルを開設し参入した。

「いろいろと後輩芸人の動画も見ましたが、日ごろからどんなことを考えているのかが分かるし、企画力の差が出ますね。僕が見ている中では、さらば青春の光のYouTubeが面白かったです。『時短企画』と銘打って、話題の映画六本を十分で見るとか、企画も、中身もなかなか面白くて。僕も頑張らないといけないですね。チャンネル登録者数、目指せ十万人!」

 新型コロナウイルス禍は、芸人の動画界への進出を早めることになり、今後、テレビとのパワーバランスも変わってくるだろう。しかし、ナイツは七月も新宿末廣亭の舞台に立つなど、寄席にこだわり続けている。その意味を、土屋はこう語る。

「寄席が好きなんですよ。寄席でお客さんの喜んでいる姿を見てると、ものすごい満足感、いや、快感があるんです。全国ツアーでいろいろな会場で漫才をやってきましたけど、舞台のサイズや小屋の雰囲気を含めて、寄席にまさるセッティングはないと実感しました。ワリ(注・寄席での出演料のこと)はそれほど高いわけではないですけど(笑)、お客さんを目の前に漫才をやるという文化は残していきたいと思いますね」

 塙は寄席のいい意味での「ゆるさ」を愛しているという。

「僕たちは、駆け出しのころから寄席での無観客試合に慣れてまして(笑)。空いている客席を前にしても、びくともしません! それはともかくですね、漫才のネタというのは、何度かお客さんの前で演じることで、磨かれていくものなんです。寄席のいいところは、それほどプレッシャーが大きくないことですね。寄席のふわっとした空気のなかでネタをやって、お客さんとのやり取りのなかで、分かることもあるんですよ。テレビカメラの前ではなく、観客を前にネタが出来ることって大切なんです」

 世界は動画の時代を迎えている。だからこそ、ライブの価値が逆に上がっているのもまた事実である。


(オール讀物8月号より)

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