夫婦仲がうまくいっていない……。そう感じている夫婦は決して少なくありません。
私は児童心理司として児童相談所に勤務していた19年間、子どもの問題を抱える多くの家族に出会い、現在は家族問題のカウンセラーとして、年間200家族の相談を受け、心理学の知見にもとづく解決法をアドバイスしています。
そうした経験から配偶者との関係に悩んでいる夫婦がいかに多いか実感しています。まずは私のところへ相談にきた、ある夫婦のケースをご紹介しましょう。
妻に連れられてきた夫は、かなり戸惑っていました。
「妻が急に『離婚する』と言いだしたのです。その理由が自分にはよく理解できなくて。離婚はしたくないと言ったら、『じゃあ、カウンセリングに一緒に行って。2人で話し合っても分かってくれないから』と言われて、仕方なくというか、解決するために一緒に来ました」
しかし妻はこう言います。
「ずっと前から離婚を考えていました」
夫に思い当たる理由を尋ねると、
「たしかに『もう離婚する!』と言われたことは何度かありました。でもケンカしたときに言われたので、本心ではないだろうと……」
なぜ、妻は離婚を考えたのでしょうか。その理由をくわしく聞いてみました。
「たくさんあります。あり過ぎるくらいです。たしかに夫は、借金があるわけでもないですし、ギャンブルもしません。夜、飲みに行くのもさほど多くありませんし、決してダメな夫というわけではないと思います」
「じゃあ、なんで」と口をはさもうとした夫をさえぎって、妻は言いました。
「一緒にいて、楽しくないのです」
すると夫は、一瞬、「わけが分からない」という表情になりました。
「夫は私に関心がないのです。私が話していても、ろくに返事もしません。話を聞いてくれないのです。食事を作っても『美味しい』とか言ってくれない。家事も私がやるのが当たり前だと思っていて、お礼の言葉なんて言われたことがありません。一緒に買い物に行っても、旅行に行っても、ほとんど話をしません。だから一緒にいても楽しくないのです」
「そんな理由で……」と、とまどう夫を前に妻は続けます。