- 2020.09.23
- インタビュー・対談
なぜ「小説」と「ビジネス書」と「寓話」がミックスされた本を書いたのか
聞き手:文藝春秋出版局
『藁を手に旅に出よう』著者・荒木博行インタビュー
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
――4章では「桃太郎」を題材にしていますね。
荒木 「桃太郎」って、きびだんごを持った桃太郎が犬と猿、キジを従えて鬼を退治しに行くお話ですけど、では「なぜきびだんごが貰えるからって犬や猿は危険な鬼退治に同行するのか」「鬼はどんなことをしたから退治すべきなのか」がよくわからないですよね。
――読んでいて、まさかモチベーション理論が「桃太郎」に関係してくるとは思いませんでした。
荒木 桃太郎に同行する犬や猿を「動機づけ」の視点で考えると、じつは関係してくるんです。心理学者のフレデリック・ハーズバーグが提唱した理論で、人のモチベーションには「衛生要因」と「動機づけ要因」の2種類があるとされています。「衛生要因」は仕事の不満足を打ち消すもので、お金や働く環境などが該当します。これらを改善すると不満をなくすことはできますが、モチベーションそのものにはつながらない。一方の「動機づけ要因」は達成感や承認など、仕事の満足度を高めてくれるもので、モチベーション向上にもつながります。
「桃太郎」でいえば、きびだんごは犬や猿にとって「衛生要因」で、鬼を倒すという大義がモチベーションを高めてくれる「動機づけ要因」ですね。そう見ると、犬や猿たちがなぜ危険な旅に同行したかと言えば、きびだんごだけが理由ではなく、桃太郎が掲げる「鬼退治」という大義にも共感したから、と見ることができます。
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