書評

歴史に残る「哲学の古典」にして「究極のビジネス書」

文: 佐藤 優 (作家・元外務省主任分析官)

『勉強の哲学』(千葉 雅也)

『勉強の哲学』(千葉 雅也)

 高等教育がなぜ必要なのかという問題に正面から取り組んだ名著だ。哲学の古典として歴史に残る本と思う。千葉雅也氏は、難解な事柄について、水準を落とさずにわかりやすく表現する卓越した能力を持っている。まず、人間は「勉強する動物」であるということを読者に再認識させる。

 

〈それに、そもそもの話として、全然勉強していない人なんていません。

 生きていくのに必要なスキルは、誰でも勉強します。読み書き、計算が基本ですね。稼ぐには仕事のスキルを覚えなきゃならない。人づきあいがわかってくるのだって勉強です。転職したら、また別のスキルの勉強をすることになる。

 人は、「深くは」勉強しなくても生きていけます〉(13~14頁)

 

「深く」勉強する目的を一昔前の人たちは、インテリ(知識人)になるためと説明したが、千葉氏はそれを「ノリが悪くなる」と表現する。

 

〈深くは勉強しないというのは、周りに合わせて動く生き方です。

 状況にうまく「乗れる」、つまり、ノリのいい生き方です。

 それは、周りに対して共感的な生き方であるとも言える。

 逆に、「深く」勉強することは、流れのなかで立ち止まることであり、それは言ってみれば、「ノリが悪くなる」ことなのです。

 深く勉強するというのは、ノリが悪くなることである。

勉強の哲学千葉雅也

定価:本体700円+税発売日:2020年03月10日


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