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戦国の京都をめぐる「仁義なき戦い」

戦国の京都をめぐる「仁義なき戦い」

聞き手:第二文藝部

『乱都』天野純希さんインタビュー


ジャンル : #歴史・時代小説

天野純希さん

英雄のいない時代だからこそ面白い

――織田信長や武田信玄といった有名武将を書くのとは違った難しさはありましたか?

天野 やっぱり、そういった武将には読む側になんとなくイメージがあるじゃないですか。今回書いた武将の大半はまったく無名なので、そこが難しいと同時に自由にやれるポイントでもありました。この時代の面白さって信長や信玄といった英雄がいないところで、人間くさい人たちがたくさん集まって、泥臭く、権力を奪い合うところにあると思います。そういうところに信長以降の戦国時代とは違う面白さがあるのかなと。

――その中で5章では唯一の庶民として法華宗徒の商人が出てきます。この章はアクセントにもなっていますね。

天野 『乱都』は戦国時代の京都の通史のような物語ですので武士以外の視点も入れたいと思いました。あと天文法華一揆(1532年)って、一般的な知名度がほぼゼロじゃないですか。資料もあまり残っていないので、ここでオリジナルの人物を作って庶民の目線で書いたものも入れたいなと。

――作中には幕府の権力の頂点に昇りつめた武将が何人も登場しますが、全員がすぐに身を滅ぼしてしまいます。なぜ彼らは京都を制しても、それ以上の存在にはなれなかったのでしょうか。

天野 足利幕府のくびきというか枠があって、彼らはその中で生きていました。信長のように枠ごとぶっ壊すっていう人たちではなかったんですよね。結局、当時の“天下”とは京都とその周囲を表す言葉だったので、そこで満足していたんじゃないですかね。だから彼らは京都を手にした途端に腑抜けるんです。京都にいる自分が好きなんでしょう(笑)。外から来た信長には明確な目的やビジョンがあったから、京都から微妙に距離を置いてたってこともあるでしょうね。

死の瞬間、人間性がむき出しに

――登場する人物の大半があっけなく死んでしまうのが印象的でした。むしろ死に際こそ天野さんが注力して書いているのではないかとも思いました。

天野 出てくる人たちは大体死んでしまいますしね。やっぱり、死の瞬間が一番その人の人間性がむき出しになると思うんです。その人を書くのなら死に様を書くのが一番わかりやすいし、面白いです。

――京都を離れたふたりは死の瞬間が書かれていませんね。

天野 室町幕府最後の将軍となった足利義昭も、死ぬところで終わらせようかと考えていたんですけど、なんか幸せな最期そうで嫌だったのでやめました(笑)。大団円って話でもないですし。でも、義昭も生き延びてはいるけれど、結局何者でもなくなってしまったので気の毒といえば気の毒ですけど。

――いま戦国時代を扱った歴史小説では今までマイナーとされていた人物を描く作品がどんどん増えているように感じます。天野さんとしては戦国の歴史小説の可能性についてどのようにお考えですか?

天野 興味の赴くままに書いているので、「面白そうだなこれ」とか「この切り口なら」という時代や人物が見つかれば、それを書くかもしれないです。

――最後にこれから読む読者の方へメッセージをお願いします。

天野 この血も涙もない世界を存分に味わっていただけたらと思います。ヤクザ映画好きにはオススメです。

単行本
乱都
天野純希

定価:1,870円(税込)発売日:2020年10月23日

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