『信長公記』は、織田信長に関する一級史料である。信長の重臣の太田牛一が著したものだ。
第零巻ともいうべき首巻からはじまり、巻一から巻十五まで、全十六巻。
首巻は、信長の父や織田一族の簡単な履歴と、信長の若き頃の逸話や桶狭間合戦の詳細などが書かれている。年代でいえば天文三年(一五三四)から永禄十一年(一五六八)まで。
つづく巻一は、足利義昭を奉じて上洛する永禄十一年のことが書かれている。
巻二は、伊勢を平定する永禄十二年。
巻三は、朝倉浅井と戦う永禄十三年。
という具合に、巻ひとつごとに一年を費やし、最後は本能寺の変を迎える天正十年の巻十五で完結している。
首巻は、天文三年から永禄十一年と三十四年間の記録になる。読んでみるとわかるが、詳細には書かれていない。桶狭間の合戦などはさすがに紙数を割いているが、細かいエピソードに脚色や潤色の気配を濃く感じる。
だが、巻ひとつにつき一年が記載される巻一以降は、かなり詳しく信長の行動が記されている。なかには、信長の領国でおこった美人局事件など、なぜこんな事件を記述しているのか謎の記事もある。しかし、信長がいかに移動してどこに泊まり、どんな感情を持っていたかが実によくわかる。
信長という人間のパーソナリティ(個性)が最も濃く現れている史料だ。同時に、粘着質に信長を記録した太田牛一のパーソナリティも興味深い。今回、資料整理を手伝ってもらった友人がいるが、『信長公記』を読んで、「まるでジャニーズのおっかけのブログを見ているようだ」といった。太田牛一の微に入り細を穿つ表現に、彼のパーソナリティが如実に現れているのだろう。
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