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「美大に行かずとも、アーティストにはなれる」――現代美術家・会田誠インタビュー

「美大に行かずとも、アーティストにはなれる」――現代美術家・会田誠インタビュー

聞き手:Voicy 文藝春秋channel


ジャンル : #小説

『げいさい』(会田 誠)

――会田さんに憧れてアーティストを目指している若者もいると思います。

今は、真面目に就職試験を受けて企業に就職したって、将来は決して安泰ではない時代ですよね。もともと美術、ましてや現代美術なんていうのは、ギャンブルみたいな、食えない確率がとても高い人生の選択ですけど、先の見えない今のような時代だからこそ、挑戦してみてもいいと思います。まあ、保証はしませんが……。
それから、僕のこの小説のメッセージの1つでもあるのですが、美大なんて行かなくたってアーティストになれるんですよ。この小説は、決して「美術大学においでよ」という趣旨ではないです。

――小説のなかで印象的なシーンが、芸大受験の2次試験の場面です。
「自由に、絵を、描きなさい」という試験問題に主人公が動揺する姿が描かれています。

僕は美術家になってから、“自由”というものの良さ、恩恵、大切さを感じる一方で、もう半分はつらさ、“自由”なんて嫌だとか、どうしてこんな時代に生まれてしまったんだろう、という恨みみたいなものもあります。ですから僕の美術作品は、大きな制約がなく自由に作れるこの時代にも関わらず、あえて古い日本の絵のスタイルを使ってみたり、自由をあえて拘束するような方法を試しているんです。毎回毎回あがくように色々と試してるわけですが、“自由”というキーワードは自分の頭のなかにいつもあって、僕にとっての大切なテーマなのだと思います。

――ご執筆の最中は、美術の作品に割くお時間は減らされましたか?

いえ、この小説のために美術の何かを減らした、ということはないです。小説は、締め切りを設定しなかったんです。だからズルズルとこんなに長くかかっちゃったんですけど(笑)。僕は美術に関してはプロですから、きちんと締め切りを設けて取り組みますが、文章、ましてや小説は全く素人という思いがありますので、「もし完成したらラッキー」ぐらいのつもりでやっていました。そして一応、ラッキーなことに終わったという。

――また小説を書きたいという思いはありますか?

今回の『げいさい』は2作目になりますが(1作目は『青春と変態』)、両方ともそこそこ成功したアーティストの手記、というスタイル、一人称で書いています。僕の中で、いわゆる小説というのは三人称で書くイメージがありますが、僕にはその形式では書けません。ただ、ストーリーを考えることは好きなので、生きてるうちにあと1作ぐらいやりたいな、と思っています。

 

音声全編はコチラから→https://voicy.jp/channel/1101/92348

単行本
げいさい
会田誠

定価:1,980円(税込)発売日:2020年08月06日

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