インタビューほか

「美大に行かずとも、アーティストにはなれる」――現代美術家・会田誠インタビュー

聞き手: Voicy 文藝春秋channel

「美大に行かずとも、アーティストにはなれる」――現代美術家・会田誠インタビュー

過激に、独創的に、現代美術界の第一線を走り続けている会田誠さん。
その活躍は美術界に留まらない。自身2作目となる小説『げいさい』は、美大受験をテーマに、現代日本美術界への真摯な問いを孕む意欲作。
その誕生の裏側をご本人にインタビュー。

音声メディアvoicyの「文藝春秋channel」にて配信した内容を一部、活字にしてお届けします。音声全編はコチラから→https://voicy.jp/channel/1101/92348


『げいさい』(会田 誠)

――『げいさい』は構想30年、執筆4年と伺いました。

僕は美術大学生だった頃、それまで乗り越えなければいけなかった“美大受験”というものに怒りを覚えていました。漠然と、この強い怒りの感情を書きたいな、と思ってはいたのですが、そのときは書き始めることもなく。しかし30歳ぐらいで美術家としてデビューしたときに、「絶対書いておかねば!」と強く思い、本当に書き始めたんです。日本の美術界という場所で生きていく上で、そのベースにある美術予備校の世界を言葉にして、みんなに示さなきゃいけないという思いがあったんですね。でも残念ながら、当時は小説を書く能力がなく、失敗しまして。あれから長い時間経ち、今回なんとか完成したんですね。もう僕は50代半ばとなり、若い頃に抱いていた生々しい怒りは正直なくなっちゃいまして、作品には青春を懐かしむようなトーンも入っていますが、それもそれで良しと思っています。

――書き残しておく手段として、あえて小説という形にこだわった理由はあったのでしょうか。

“日本の美術界を分析する”みたいなお堅い内容は、評論という形で書くのが普通なのかもしれないのですが、僕がそれを書くのはおこがましいと思いますし、なにより僕自身が、評論といった難しい硬い文章を読むのが苦手で……。若い頃から、小説を読むのは楽しかったので、この形にしました。

――『げいさい』では、1980年代に美術界で生きる若者の姿が描かれています。当時と今とで、美術系の若者に違いを感じることはありますか?

80年代といえば、日本はバブル真っ只中。世間が浮かれてたのはよく覚えていますが、自分も浮かれてたかというと、そんなことはなかったですね。浮かれてたのはジュリアナみたいなディスコだったり、六本木とかだったんでしょうけれど、美術系の若者たちはそういうところとあまり縁のない青春を送った人が多いのではないかと思います。絵の具の付いた汚いツナギを着て作品を作る生活でしたから。“浮かれてる世間からずれた僕ら”みたいな感じでしたね。一般的な遊んでる若者たちとのギャップが激しかったような記憶があります。今の日本は、当時と比べると経済的に貧しくなってきていますし、厳しくシリアスな時代になっていますよね。現役で美術をやってる若者の実態や、当事者の心が分かるわけではありませんが、僕らが若かった頃とはだいぶ違う条件だろうなということは分かる。そんな彼らに何か一言言うとしたら、「大変だろうけど頑張ってくれ」としか言えないですね。

げいさい会田誠

定価:本体1,800円+税発売日:2020年08月06日


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