2018.08.24 書評

「対決」によって画家の意図や時代精神を浮かび上がらせる鮮やかな手腕に脱帽

文: 岡本弘毅 (兵庫県立美術館学芸員)

『名画の謎 対決篇』(中野京子 著)

『名画の謎 対決篇』(中野京子 著)

 二〇一七年、兵庫県立美術館と上野の森美術館で「怖い絵」展が開催されました。両館合わせて七〇万人近い人々が訪れたこの「怖い絵」展、本書をお読みの皆さんには今さらでしょうが、中野京子さんのベストセラー『怖い絵』を出発点にした展覧会です。同書や『名画の謎』シリーズなど中野さんのファンの来場を当て込んではいたものの、ここまでの成功は予想できませんでした。無粋な話ながら、海外から作品を集める展覧会は存外お金が掛かるもので、正直黒字にならないことが多いのですが、そちらでも結構な成果が出たので、主催者一同大いに喜ぶところとなりました。

 ここでこのようなお話をするのは、私が関係者の一人だから自慢したかった、というわけではもちろんありません。中野さんの世界を不完全ながらも展覧会という形式に移植しようという今回の試みが、現在の日本の美術館業界に一定のインパクトを与える出来事だったからです。そのことをお伝えするために、展覧会の裏話を少しばかりご紹介しましょう。



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名画の謎中野京子

定価:本体860円+税発売日:2018年08月03日