原田マハさんの、モネをはじめとした印象派に関する著作からは、絵画芸術への純粋な愛ばかりでなく、お人柄をうかがわせる優しさ、そして人間の善意への信頼が伝わってきて、心地よい読書タイムとしみじみした読後感を味わわせてもらってきた。
その著者が、世紀末イギリスの産んだグロテスクで奇態な大輪の花ともいうべきオスカー・ワイルドとオーブリー・ビアズリーを取り上げる……いったいどんなふうになるのだろう、と『サロメ』発刊後すぐ興味津々で読んだ記憶がある。
今回、文庫解説を引き受けるにあたって再読し、新たに全文書き下ろすつもりだったが、本書の単行本発刊後まもなく「週刊文春」に寄稿した短評は、初読の興奮のままに書いた新鮮さ(自画自賛?)があると思うので、以下に再掲することにした。
──原田マハさんが新境地を切り開き、したたるような妖しいエロスの世界をくり広げる。
世紀末ヨーロッパで一世を風靡した作家オスカー・ワイルド、彼の戯曲『サロメ』に悪魔的挿画の数々を提供した夭折の画家オーブリー・ビアズリー、姉で女優のメイベル・ビアズリー。この三人の関係が、史実という大樹に絡みつく蔓草のようなフィクションに彩られる。
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