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評論 「かっこいい」だけではない三島へ――近年の上演から<特集 生きている三島由紀夫>

評論 「かっこいい」だけではない三島へ――近年の上演から<特集 生きている三島由紀夫>

文:山﨑 健太

文學界12月号

出典 : #文學界

「文學界 12月号」(文藝春秋 編)

 三条会『サド侯爵夫人』

 三条会は演出家の関美能留が主宰する劇団。三条会による近年の三島作品の上演には『熱帯樹』(二〇一五)や『近代能楽集』(二〇一七)もあるが、ここでは二〇二〇年九月に上演された『サド侯爵夫人』を取り上げたい。

 舞台に並ぶのは学校で使われるような机と椅子。開演前と幕間にはハリー・ポッターのテーマ音楽が繰り返し流され、登場人物はみな女子高生の格好で登場する。異化的な演出で定評のある三条会らしい舞台だと言ってしまいたくなるところだが、事態はそう単純ではない。二幕になると学校然とした机と椅子はブルーシートで覆われ、登場人物は今度はいかにも貴族的な衣装で登場するのだ。これは一体何を意味しているのだろうか。

 そもそも、『サド侯爵夫人』というのはサン・フォン伯爵夫人とシミアーヌ男爵夫人が、品行方正な貴族にはふさわしくない下世話な噂話を交わす場面からはじまる。そこで語られるサド侯爵のスキャンダラスなふるまいは最初こそ「あのこと」とその内実を伏せたかたちで話題に出されるものの(しかし「あのこと」という言い方は「名前を呼んではいけないあの人」ことヴォルデモートを連想させる、というのは穿ちすぎだろうか。最後まで姿を現さない、言わばラスボスとしてのサド侯爵!)、すぐにサン・フォン伯爵夫人によって詳細に語られることになる。

 

この続きは、「文學界」12月号に全文掲載されています。

文學界 12月号

2020年12月号 / 11月7日発売
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