上弦の月夜、猫のマスターがいる満月珈琲店では星詠みの勉強会が開かれて――
――満月珈琲店には、決まった場所はございません。
時に馴染みの商店街の中、終着点の駅、静かな河原と場所を変えて、気まぐれに現われます。
そして、当店は、お客様にご注文をうかがうことはございません。
私どもが、あなた様のためにとっておきのスイーツやフード、ドリンクを提供いたします。
あの大きな三毛猫のマスターは、今宵もどこかで微笑んでいるのだろうか?
*
空には、くっきりと半月が浮かんでいる。
上弦の月が空に輝く夜は、勉強にうってつけだ。
満月に向かって、どんどんエネルギーを増していくこの半月のパワーは、すべてのものに注がれ、各々のステップアップに大きく役立ってくれる。
そんなわけで、我が『満月珈琲店』も上弦の月の夜は、勉強会を開いている。
月明りの下、大きな公園の広場に、『満月珈琲店』のトレーラーがあり、柔らかな灯りをともしている。それを扇形に囲むようにテーブルがあり、仲間たちが大きな三毛猫のマスターの許に集まっていた。
彼は、当店の責任者であり、『星詠み』だ。
とっぷりと日が暮れ、空は濃紺に染まり、初冬の風が吹いているけれど、トレーラーカフェを中心に、その周辺がぼんやりと明るく暖かいので、勉強するのに困ることはない。
ここにいるのは、今宵『つながっているもの』たち。彼らは星の遣いであるが、自分たちのこと以外は分かっておらず、時折マスターの生徒になる。
生徒たちには、各自テーブルが与えられ、その上には『月光のレモネード』が置いてある。
月の光をたっぷり浴びたレモンが添えられたレモネードは、心身に染み渡る甘酸っぱさだ。仕事帰りの疲れた方への一杯としてもおすすめだけれど、これから勉強を始める生徒たちの活力にもなる。
「――このレモネード、私の髪の色みたい」
私・金星は、自分の髪に触れながら、ふふっ、と笑ってレモネードを口に運び、マスターを見た。
「マスター、あらためて、質問なんですけど」
「なんでしょう、ヴィーナス」
「『魚座の時代』から『水瓶座の時代』に変わったのは、西暦二〇〇〇年頃なのに、今年、二〇二〇年になって急に激動したのは、どういうわけなんでしょうか?」
マスターは、なるほど、と頷いて、皆を見回す。
「ヴィーの質問に答えられる方は?」
すると赤髪の青年が、テーブルに手をついて立ち上がる。
「『魚座の時代』が終わったのは、西暦二〇〇〇年頃。その後、時代は『水瓶座の時代』へと変わった。それなのに、前時代である魚座の雰囲気をずるずると引きずっていたのは、『地』の時代が続いていたからだ。だが、それも二〇二一年――正確にはこの二〇二〇年の十二月に『地』の時代が終わり、『風』の時代になる。二〇二〇年は、その影響が出たからだ」
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