本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
お寺は「日本を知る」最強のパワースポットだ!

お寺は「日本を知る」最強のパワースポットだ!

鵜飼 秀徳

『お寺の日本地図』(鵜飼 秀徳)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

『お寺の日本地図』(鵜飼 秀徳)

 また、千葉県では日蓮宗寺院が多いが、それは日蓮の直弟子日進が法華経寺(千葉県・法華経寺の章を参照)を拠点に、上総や下総で大布教を展開した影響である。

 現在、寺院数の上で最大勢力を誇っているのは曹洞宗(約一万四五〇〇カ寺)である。曹洞宗の寺院は東日本、とりわけ北海道・東北に教線(布教の範囲)を拡大した。その理由について、『曹洞宗宗勢総合調査報告書 二〇一五』では、〈現在の曹洞宗寺院の多くは、一五世紀中頃以降に開創されたものが大多数を占めるが、それは当時、新興勢力として台頭してきた在地領主である『国衆』が領有する発展途上の村落に展開した。商工業が発展し、多くの人々を引き寄せる都市部においては、他派の教線が入り込んでいたためであり、曹洞宗寺院はその間隙を縫って、その数を飛躍的に増加させていった歴史的経緯がある〉としている。

 さらに、戦国時代を迎えると、各地の戦国大名の庇護を受けた寺院が、その地域で力を持つようになった。たとえばこの頃、江戸に入った徳川家康は東京・芝の増上寺の法主、存応に深く帰依し、菩提寺とした。そのことで増上寺は徳川将軍家歴代の墓所となり、江戸では浄土宗寺院が勢力を拡大する。現在でも都内には浄土宗寺院が多い。家康のブレーンだった天台宗の僧、天海が三代将軍家光の時代に創建した寛永寺も同様に将軍家の菩提寺となり、江戸時代は関東では浄土宗と天台宗の勢威が高まった。

 しかし、明治維新の時、日本仏教界最大の法難が訪れる。新政府が出した神仏分離令に端を発した仏教への迫害、廃仏毀釈である。鹿児島県では寺院が一つ残らず打ち壊され、宮崎県や高知県でも大方の寺院が消滅した。廃仏毀釈の影響は凄まじく、約九万カ寺あった寺院がわずか数年の間に半減したとも言われている。今でも鹿児島県、宮崎県、高知県に寺院が少ないのは廃仏毀釈の影響である。

 特に鹿児島県では江戸時代の寺院分布が完全にリセットされた。廃仏毀釈の嵐が止んだ後、この寺院空白地帯において浄土真宗が大布教を開始。現在、鹿児島県内では八割以上が浄土真宗系寺院となっている。

 以上のように日本仏教の歴史を俯瞰してみるだけでも、地域の信仰のあり方の一端を垣間見ることができる。

 寺院は地域社会の隅々にまで、染み込むように入っていった。京都や鎌倉などにある宗門の本山詣り、初詣や節分会などの年中行事、四国遍路などの巡礼、あるいは現代では御朱印集めや仏像鑑賞を目的とした寺巡りなど、地域を越えて生活や文化的習慣に強く影響を与えてきた。寺院を広い視野で学ぶことは、「日本人とは何か」に迫ることでもある。

お寺の日本地図
名刹古刹でめぐる47都道府県
鵜飼秀徳

定価:1,100円(税込)発売日:2021年04月20日

ページの先頭へ戻る