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立憲民主党代表が、総選挙に向けて提示する、目指すべき社会のあり方

立憲民主党代表が、総選挙に向けて提示する、目指すべき社会のあり方

枝野 幸男

『枝野ビジョン 支え合う日本 』(枝野 幸男)

出典 : #文春新書
ジャンル : #政治・経済・ビジネス

『枝野ビジョン 支え合う日本 』(枝野 幸男)

 そんな中で、二〇二〇年の年明けから、新型コロナウイルス感染症の脅威が世界に襲いかかった。このウイルスの猛威と、対応に追われる安倍・菅政権の迷走は、結果として現代日本が抱える多くの問題点や課題をあぶり出した。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、なお予断を許さないが、このことによって私は、これまで訴えてきた「私たちが目指す社会」の方向性は間違っていないことを確信した。「多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う」社会。上から画一的に社会を導くのではなく、社会を「下から支えて押し上げる」政策。こうした方向性が、今こそ求められている。
 

 この機会に改めて、私の考える「ポストコロナの社会像」を明らかにしたいと考え、二〇二〇年五月二九日の定例記者会見で、「支え合う社会へ─ポストコロナ社会と政治のあり方(命と暮らしを守る政権構想)」を発表した。

 これは、党で議論して決定したものではなく、私個人としての「たたき台」に過ぎない。しかし、安倍政権に不安や不満を抱く皆さんや、自公政権に代わる新しい政権を目指す皆さんの間では、その趣旨や本質について、おおむねご理解いただけたと確信している。

 そして、国民民主党などとの合併で新たにスタートするにあたってつくられた新しい「綱領」において、新たな知恵やアイデアも取り込みながら、その方向性を多くの仲間と共有することができた。
 

 本書は、会見で発表した政権構想や、新しい立憲民主党綱領のベースになっている考え方、特に官房長官として対峙した二〇一一年の東日本大震災以降、折に触れ考えてきたことを執筆した。私の政治理念や政治哲学、ビジョンと呼んでいただいて良いと思っている。私が誤解を恐れず訴えてきた「『保守』であり『リベラル』である」という言葉の意味についても、詳細に説明している。

 念のため付け加えれば、立憲民主党の個別政策や総選挙に向けた選挙政策を記したものではない。考え方を説明するのに必要な範囲で各論の記述もあるが、網羅的な個別政策は、幅広い国民の皆さんにご意見やご提案をいただきながら、党全体として、深化させた政権構想へと練り上げていくことになる。

 第2章で述べているが、自民党に対抗しうるもう一つの選択肢として認められる上で、本質的に重要なのは、その時々の社会状況に応じて短期的な目標として示される各論よりも、理念とか哲学とも呼ぶべき「目指す社会像」を明確にすることだと確信している。

 さて、私には、一九九八年に新民主党(新進党解党を受け、旧民主党を含む四党が合併してできた民主党)が結成されてそう間もない時期に聞いた、忘れられない言葉がある。

 今となっては若気の至りと言うしかないが、当時二期生だった私は、若手の同僚議員とともに、当時三期生の岡田克也さんに、党の代表選挙に立候補することを要請した。岡田さんは、その要請をにべもなく一蹴したのだが、その理由は、「総理になる準備ができていない」というものだった(その後、岡田さんは、総理になる十分な準備を整えて、民主党の代表となった)。

 野党第一党の党首は総理候補であり、その準備もないのに手を挙げることは、国民の皆さんに対して無責任極まりない。ある意味で当然のことだが、そのことを明確に認識していた岡田さんの真面目さと真剣さに、私はたじろいだ。
 

 二〇一一年三月、私は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故に対応する菅直人総理(当時)を、官房長官としてすぐそばで支えていた。その対応に至らない点があったことは、私も含めて重く受け止めていかなければならない。

 この深刻な危機への対応を通じて、私は、「総理の責任の重み」を、なお一層、痛感させられた。

文春新書
枝野ビジョン 支え合う日本
枝野幸男

定価:935円(税込)発売日:2021年05月20日

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