- 2021.05.24
- インタビュー・対談
<堂場瞬一インタビュー>「父子の葛藤」というテーマについての、作家生活20年目の結論。
聞き手:第二文藝部
『赤の呪縛』(堂場 瞬一)
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
作家デビュー20周年、コロナ禍だからこその挑戦!
作家デビュー20周年を迎えた著者は、記念企画として、「警視庁追跡捜査係」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」の三大シリーズ完全乗り入れコラボを行っている。また、「コロナ禍」という現実は、どういった影響を与えているのだろうか。
「『時効の果て 警視庁追跡捜査係』(角川春樹事務所)や、『骨を追え ラストライン4』(文春文庫)では登場人物の乗り入れにトライしましたが、かなり苦労しました。ただ、しんどいことをした分だけ、書き手としての基礎体力は上がったと実感しています。今は『ラストライン』シリーズの続編も書いていますが、コラボ作品じゃないとこんなにも楽なのか、と驚いたんです(笑)。この先、2000枚という大長編の構想もありますし、さらに違う筋肉を鍛えていくつもりです。
珍しいところでは、Apple Booksの独占配信企画として、『ラストライン』シリーズの短篇『戻る男』という作品にも取り組みました。ベテラン刑事・岩倉剛が登場しますが、警察小説の王道から『ド外れ』の面白い小説になっていると思います。
コロナ禍の影響はやはりありますね。感染を広げないために、現地取材や会食を控えていることもあって、時間が増えた分、執筆の分量は増えました。ただ、編集者や取材先での雑談が減ったことを少し心配しています。リモートでの会議などで、仕事は順調に進みますが、ちょっとした雑談から話が転がって小説が生まれる、ということが減っていくような気がしていて。今も、東京五輪についての議論を、雑談的に重ねる中で、自分のなかで書きたいものが浮かび上がりつつあるんです」
一日の執筆量として原稿用紙55枚という目標を自らに課し、すさまじい刊行ペースを維持する著者が見据える「この先」とは――。
「20年という時間を振り返ったときに、時代に寄り添って書いてきたという実感があります。これからも自分の殻にこもることなく、世の中の動きを見つめて、小説という形で、『いま』を記録し続けたいと思っています。
そのために、健康でいなくちゃいけませんから、運動したり人間ドックをちゃんとうけたりして、いろいろと気を使っています(笑)」
どうば・しゅんいち 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。2021年に作家デビュー20周年を迎えた。