夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズが始まって、今年でなんと35年! 2年半ぶりの最新刊『陰陽師 水龍ノ巻』も刊行されます。 今回は、この最新刊から「陰陽師シリーズ」らしい印象的なフレーズを、担当者の独断と偏見でご紹介いたします。
「麩枕」 博雅が朱雀門の鬼と交換した名笛・葉二の由来が明らかに
鬼よ、朱雀門の鬼よ。(略)
おまえのやれなかった仕事を、わたしがかわりにしたよ。
おまえからもらった葉二を吹いたよ。
源博雅の優しさがにじみ出ている一編です。
「いそざき」 晴明を訪ねてきた女が被衣をとると、その顔には奇怪な鬼の面が
「おい、晴明よ。そんなことがあるか。おまえは何でもできるのではなかったか――」
「博雅よ、おれにもできぬことはあるのだよ……」
「何故できぬ。何ができぬのじゃ」
「たとえば、人の心を変えることじゃ」
この晴明と博雅のやりとりが、「陰陽師シリーズ」の魅力のひとつ。
安倍晴明でも手に負えぬ一件の行方は――。
「読人しらず」 人が読んだ歌をくれという鬼を呼ぶため、博雅は和歌を読む
「(略)生きていることが、そのまま歌なのですよ。人の生き方に、うまいも下手もあるわけな
いでしょう。歌がうまいから何だというのです。歌が下手だから、何だというのです。人の生き方
に、上手、下手があって、たまるものですか!」
その無垢な情熱で、鬼さえ説得してしまいそうな勢いの源博雅。博雅ファン必読!
「蘇莫者」 若き日の蝉丸の恋。そして、敦実親王のひそかな思惑とは
「あなたは、もう、お忘れですか……」
女が囁くように言った。
「わたしは、あなたが最初に出会われた哀しみです……」
ああ、そうなのかね。
そうなのかね。
蝉丸は、心の中でうなずく。
蝉丸と、毎夜のように彼のもとに通ってくる女との、なんと切なく美しいやりとり……。ある秘
儀が描かれる、ド迫力の中編です。
そしてもちろん、あのフレーズも。
「どうするのだ」
「む」
「ゆくのか」
「う、うむ」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになったのであった。
一編ごとの読み切りなので、最新刊からでも楽しめる「陰陽師」シリーズ。
初めての方も、長年のファンの皆様も、ぜひお手にとって、お楽しみください。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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