『そして、バトンは渡された』をお読みくださり、ありがとうございます。
書きあげてからずいぶん経ちますが、この作品は私にとって思い入れのある1冊で、今でも物語の中の様々な場面を時折思い出します。
普段はテーマなどを掲げずに執筆しているのですが、『そして、バトンは渡された』は書いている途中に「私はこんな気持ちが書きたかったんだ。これが普段思っていることなんだ」と気づいた作品です。
ひとりの女の子に、様々な大人が親として関わっていく様子を描きましたが、「愛情を注ぐ当てがあることは、こんなにも幸せなことなんだ」ということを、改めて感じました。
私には、今、7才になる子どもがいます。また、結婚前は中学校で働いていました。わが子にしても、中学生にしても、自分より若い世代と一緒にいると、自分だけでは思いもしなかった明日や未来がやってきます。子どもたちが、たかが知れている毎日を、わくわくとドキドキに満ちたものに変えてくれたこと、明日を楽しみでたまらなくさせてくれたこと。そんなことを書きながら思い出しました。
また、この作品で本屋大賞をいただき、書店に伺わせていただく機会がたくさんありました。
書店では、素敵にレイアウトをしていただいている様子や、どうやって作るんだろうと驚くような手の込んだポップを見せていただいたり、温かい感想をお聞かせいただいたりしました。こんなにも一生懸命に手をかけ愛情をこめ、本を読者の方に届けていただいているのだと実感しました。
部屋にこもって一人で執筆しているので、うっかり孤独を感じそうなこともあります。けれども、本が読者の方に届くまでは、たくさんの人とともにいるのだということに勇気づけられ、また、共同作業だからこそ手を抜くわけにはいかないと気が引き締まりました。
読んだ人が少しでも明日が待ち遠しくなるような、そんな作品を書いていけるよう、努めていきたいと思います。
「週刊読書人」2021年7月30日号掲載
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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