2022年3月、選考委員6人全員の熱い支持を受け、年森瑛さん「N/A(エヌエー)」が第127回文學界新人賞を受賞しました。「文學界」掲載時から、すでにSNSで共感や絶賛の声が上がっていた注目の本作ですが、いよいよ6月22日(水)に単行本が発売となります。発売に先駆けて、著者の年森瑛さんのコメントを公開します。
年森瑛さんコメント
シュレッダー行きになるのだろうと思っていたものが本の形になって人目に触れることを、嬉しく思う反面、怖い気持ちもあります。
言葉にし難いものを言葉の羅列に仕立て上げてしまう悪辣なやり方でしか、この世界のどこかで透明になっている人を表出できませんでした。
本当にこれで良かったのか、今でも分かりません。読んだ方に判断していただくしかないのだと思っております。
よろしくお願いします。
文學界新人賞受賞のことば
ケータイ小説が大流行していた中1の春、本をまったく読まない同級生たちが図書室への入荷を望んだのに、先生が「ケータイ小説は小説じゃないから駄目です」と突き放していたのを覚えています。
先生。先生から見て、これは小説ですか。
もし、この小説らしきものが清潔な図書室に置いてもらえなくても、私は平気です。抜け毛まみれのトイレでも、防虫剤臭い押し入れでも、ピザ屋の排気口の下でも、どこかで必要とする誰かに読まれるならそれでいいです。
友だちのYさん、助けてくれてありがとう。選考に携わった方々にも深く感謝いたします。
(初出 「文學界」2022年5月号)
『N/A』あらすじ
松井まどか、高校2年生。体重は13の時からしばらく40キロ弱をキープしていて、通っている女子高では“王子様”として担ぎあげられ、うみちゃんとは“お試し”で付き合って約3か月になる。「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。
優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。
著者プロフィール
年森瑛 としもり・あきら
1994年生まれ。2022年、「N/A」で第127回文學界新人賞を受賞してデビュー。
年森瑛『N/A』公式Twitterでは『N/A』に関する皆さんのご感想をリツイートしたり、本書に関する情報を担当がツイートしたりします。
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