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イナダシュンスケの「マズ味」研究――パクチーに潜む真の魅力は

イナダシュンスケの「マズ味」研究――パクチーに潜む真の魅力は

稲田 俊輔

「食いしん坊のルーペ」第5回

出典 : #WEB別冊文藝春秋

第5回 パクチーのマズ味

 皆さんはパクチーはお好きですか? 一般的に、好き嫌いが大きく分かれるとされる食材です。苦手な方も少なくないのではないでしょうか。
 しかし10年くらい前は、今よりもっと苦手な人が多かったはずです。当時から飲食店をやっていた自分の感覚だと、お客さんの半分以上、いやむしろ大半が苦手だったんじゃないかと思います。
 今は、少なくともそこからは大きく様変わりしました。「好き」と言い切る人は確実に増えました。もしかしたら若干の苦手意識は持ちつつ、ちょっと無理して「好き」と言ってる人もいるかもしれません。ともあれ、日本人はついにパクチーを(ほぼ)受け入れた、という印象があります。スーパーでも普通に買えるようになりました。一時期はパクチー料理専門店みたいなものも次々に出来たし、今やごく普通の居酒屋のメニューにパクチーサラダなんて物もあったりします。10年前には考えられなかったことです。

 では、現在パクチーが好きな人に重ねて質問です。初めて食べた時からそれを好きになれましたか? これにイエスと答える方は案外少ないのではないかと思うのですが、どうでしょう。僕が初めてパクチーを食べたのは30年以上前、タイ料理屋さんでです。もちろん最初は苦手でした。
 タイ料理そのものは物珍しい食べ物のオンパレードながら、その奥底にはどこか妙な親しみやすさや人懐こさがあり、いっぺんで気に入りました。味のことだけではなく、(今でもちょこっとそんなところがあるかもしれませんが)それは当時のサブカル的な文脈でカッコイイ食べ物でした。おしゃれで、ヘルシーで、知る人ぞ知るマニアックなおいしさ。

 

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