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東京、京都、大阪……アートフェアを巡り日本のアート市場を考える

東京、京都、大阪……アートフェアを巡り日本のアート市場を考える

透明ランナー

透明ランナーのアート&シネマレビュー「そっと伝える」

出典 : #WEB別冊文藝春秋

 3月! 春ですね! 春といえばそう、アートフェアです!

 アートフェアとは、複数のアーティストやギャラリーが一堂に会して作品の売買を行うアートの見本市です。アーティストやギャラリーにとっては自身をアピールする場、コレクターにとっては市場の動向を探る場となりますが、一般客にとっても気軽にアートを購入できる場として楽しむことができます。

 2023年3月10日(金)~3月12日(日)、日本最大級のアートフェア「アートフェア東京」が東京国際フォーラムで開催されました。年に一度の国際的アートイベントであるアートフェア東京、私は高校生だった2008年から毎年(コロナ禍で中止された2020年を除いて)訪れています。

 一方で2023年2月、新たなアートフェアが産声を上げました。その名は「EASTEAST_TOKYO」。都内の若手ギャラリスト・若手作家が中心となって企画された熱気あふれるアートフェアです。

 アートフェア東京と同じ3月の週末、2022年から始まった「日比谷OKUROJI ART FAIR」も開かれました。JR高架下のスペース「日比谷OKUROJI」で行われ、無料で入場でき、ギャラリストと来場者との距離が近いイベントです。

 アートフェアは東京だけで開かれているわけではありません(これは重要なことです)。私はアートフェア東京に行ったその日の夜に大阪に向かい、2023年が第1回となる「オオサカアートフェスティバル」を観に行きました。その一週間前には京都で、2018年に始まった「ARTISTS' FAIR KYOTO」が開かれていました。

 コロナ禍、円安、NFT、新興国の経済成長、一般向けアート市場の拡大……などなど、アートを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。それに伴いアートフェアの意義も刻一刻と変化しています。今年のアートフェア東京でもNFTコーナーが設けられていました。

 というわけでこの記事では、2023年2月~3月に開かれた5つのアートフェアを巡りながら、日本におけるアートフェアの意義について考えてみたいと思います。(本文中写真は透明ランナー撮影)


EASTEAST_TOKYO

 このツイートが行った直後の感想ですが、まさにこんな感じでした! 今回が第1回なのでどんな感じになるかなと思っていたのですが、どのエリアも人で溢れ、予想を上回る大盛況でした。作品の売買に加え、ライブパフォーマンス、DJイベント、トークイベントなどがほぼ一日中行われ、フード&ドリンクの店舗も出店していました。

 日動画廊やタカ・イシイギャラリーといった名だたる名門が並ぶアートフェア東京に対し、「EASTEAST_TOKYO」は都内を中心とした約25の新進ギャラリーにフォーカスした新しいイベントです。

 その中のひとつ「PARCEL」は、2019年に中央区にオープンしたばかりのギャラリーです。立体駐車場を改装して作り上げた空間で、中は独特な階層構造になっています。

 PARCELを立ち上げたのは武田悠太(たけだ ゆうた、1984-)。日本橋の繊維問屋街で約70年続く衣料品問屋「丸太屋」の4代目です。慶應経済→アクセンチュア→実家の老舗という経歴を歩んできた彼は、アート業界に新しい風を吹き込もうとギャラリー業界に参入しました。

 私は2021年に彼と話したとき、「日本の若手アーティストを世界に売り込むためには既存のアートフェアに風穴を開けなければいけない」と、具体的なビジョンと共に熱く語ってくれました。そのときの情熱がこのような形で結実したんだなあ……と感動しきりでした。

 トークイベント会場の座席の位置も特徴的で、講師が一方的に話すのではなく、参加者が車座になって向き合う配置になっています。企画側の明確な意志が感じられてこういうのは好きです。

 

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