よお、調子はどうだい。
生きていればいろんなことがある。だけど、しかめっ面してたってしょうがない。怒りや恨みからは何も生まれない。笑顔で前を向いて、毎日を明るく楽しく過ごそうじゃないか。俺がこの本で伝えたいのは、そういうことだ。
ここでは「70歳以上が抱えている悩み」と「70歳以上の身内にまつわる悩み」を取り上げている。「人生100年時代」と言われて久しいのに、「高齢者」をテーマにした悩み相談の本は、これまでなかったっていうじゃないか。
歳を重ねたからって悩みはなくならない。むしろ増えていく。だけど、悩める高齢者は、誰にも相談できないんだよな。若い人に聞いたって、慰めてはくれてもわかってはもらえない。人生の先輩に聞こうとしても、話が通じなかったりする。
俺は今年(2023年)の3月で87歳になった。まあまあベテランの高齢者だ。50年以上前から、TBSラジオ「ミュージックプレゼント」の生中継を続けている。1万軒以上の店や会社を訪ねて、何十万人という「ジジイ」や「ババア」に会ってきた。専門家や介護施設の職員からも、よく話を聞かせてもらっている。
しかも、遠慮しないでハッキリものを言うのが、俺の身上だ。年寄り自身の悩みや年寄りが関係する悩みに答えるのは、俺に与えられた使命なんじゃないか。だんだん、そう思えてきた。それぞれの回答には、ちょっとおこがましい言い方になるけど、「毒蝮三太夫」だからこそ言えることを盛り込んだつもりだ。
まずは目次を見て、41本の中から自分と重なっている悩みのページを読んでみてほしい。その次は、自分が子どもたちの世代に抱えさせているかもしれない悩みや、逆に自分が親世代に抱えさせているかもしれない悩みを探してみてくれ。相手の悩みに気づくきっかけになるはずだ。
ほかの悩みのページも読めば、「悩み」を客観的に見ることができるだろう。人間ってのは、わざわざ自分から悩みを背負ってしまうことがあるんだなとか、追い詰められると物事を悲観的にしか見られなくなるんだなとか、年寄りっていうのはどうしても頭が固くなるんだなとかね。
悩みをどうするかも大事だけど、同時に考えたいのが「より良く生きる」ための算段だ。最後の章では「マムシ流 愛される年寄りになる12の極意」を紹介してある。有名無名関係なくこれまで出会った人たちに教わったことや、俺が常日頃考えていることを12の項目にまとめてみた。
「愛される」といっても、まわりに媚びようって話じゃない。「愛される年寄り」は、他人や自分や世の中を「愛せる年寄り」でもある。受ける愛や与える愛が多ければ多いほど、人は幸せになれると俺は思う。胸を張って自分らしく生きるための極意と言ってもいい。年寄りだけじゃなくて、若い人にも当てはまるはずだ。
人生は無限じゃない。いつかは終わりが来る。悩みを抱えたままじゃ、死んでも死に切れない。悩みごとや困りごとと上手に折り合いをつけて、良く生きるための努力を重ねて、毎日を精いっぱい楽しく生きていこう。
ジジイもババアも、人生はこれからだ。これからの人生で、今日がいちばん若いんだ。「精いっぱい楽しく生きた」と思いながら、次の旅に出ようじゃないか。
「まえがきより」