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生れてくる子の名前を考えつつ、町の揉め事に立ち向かう!?――『おやごころ』(畠中恵)

生れてくる子の名前を考えつつ、町の揉め事に立ち向かう!?――『おやごころ』(畠中恵)

「オール讀物」編集部

Book Talk/最新作を語る

出典 : #オール讀物
ジャンル : #小説 ,#歴史・時代小説

『おやごころ』(畠中 恵)

お気楽者が親になり迎えた変化

 畠中恵さんの人気時代小説「まんまこと」シリーズ。待望の新作では、主人公の麻之助がついに父親となり、生まれてくる子の名を考えつつ、町の揉め事に立ち向かっていく。シリーズ当初からの環境の変化と、お気楽者の麻之助の成長も読みどころのひとつだ。

「シリーズの第一作を書いた時には、ここまで長く続くことになるとは思っていませんでした。町名主という立場の主人公は珍しい設定で、跡取り息子という立場なら、色々な決まり事に縛られず動けるだろうと、まだ主である親が、いることにしました。

 麻之助が話の中で動くと、同じく町名主の跡取り息子である清十郎や、与力の養子で石頭の吉五郎といった悪友や、縁の出来た娘さん、高利貸しの丸三など、周りの人の立場や考えが変わっていく。それに引っ張られ、麻之助の気持ちや立場もまた動いていく。そうやって今も、まんまことシリーズの時が、進んでいる気がします」

 江戸時代の結婚や出産にまつわる様々な周辺の事情が、物語の軸になっている。丁寧に資料にあたる畠中さんならではのエピソードも興味深い。

「麻之助は、かつて妻子を失っています。江戸の頃は、出産は今と比べ物にならないほど危険でしたし、子供の死は、本当に多かったようです。資料で承知してはいても、現代では実感として追いついていないのではないでしょうか。その怖さに向き合った時、麻之助がどう変わって行くかを、知りたいとも思ったんです」

 結婚は、身分や立場によってもだいぶ事情が違ったという。

「長屋での結婚は、気軽なものもあったでしょう。ただ、立場のある人ほど結婚は当人達のものというより、公のものという感じだったかと思います。今よりはるかに、その傾向が大きかったのではないでしょうか」

 タイトル作でもある「おやごころ」では麻之助と妻のお和歌に無事に息子の宗吾が生まれるが、そこへ図ったように親子の相談事が次々と持ち込まれ……。新たな段階を迎えた、彼らの物語は今後どうなっていくのだろうか。

「親となったことで、この先はより、背負うものが、大きくなっていくでしょうね。親を亡くした清十郎は、一足先に八木家の当主となり、支配町を預かってます。吉五郎も遠からず、先々の事を決める日が来る。お和歌の弟も、いずれは町名主となるわけですから、これから先、ひょっこりと出て来そうです。いずれは宗吾坊にも振り回されていくのではないでしょうか」

 これからもますます目が離せないシリーズだ。


はたけなかめぐみ 高知県生まれ。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。16年、「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。


(「オール讀物」6月号より)

単行本
おやごころ
畠中恵

定価:1,650円(税込)発売日:2023年05月10日

電子書籍
おやごころ
畠中恵

発売日:2023年05月10日

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