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【幻の「人物相関図」も公開】初キングの新人営業と編集者が激推しする「スティーヴン・キング入門は、『異能機関』から!」

【幻の「人物相関図」も公開】初キングの新人営業と編集者が激推しする「スティーヴン・キング入門は、『異能機関』から!」

『異能機関』(スティーヴン・キング)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 2024年に作家デビュー50周年を迎えるスティーヴン・キング。50周年プロジェクト第1弾の長編『異能機関』を担当したのは、編集も営業も「初めて」の人だった――! キング初めてコンビが、『異能機関』のフレッシュな魅力をつらつらおしゃべりします。ごく一部で話題になった「担当が好きすぎてつい描いちゃった人物相関図」も公開!


『異能機関 上』(スティーヴン・キング)
『異能機関 下』(スティーヴン・キング)

タカハシ 今日は絶賛発売中のスティーヴン・キングの新作『異能機関』について、新人営業のデグチさんに、私、翻訳出版部のタカハシが話を聞いていきたいと思います。

デグチ よろしくお願いします。

タカハシ イージーに自己紹介をしていただければと思いますが、2023年4月に来ていただいたという、「ド」新人でいらっしゃる。

デグチ 「ド」ですね。

タカハシ 営業部ご所属ですので、書店さんに日々営業していただいている、ということですかね。

デグチ まだ担当書店は持っていないんですけれど、7月から新たに担当を持って営業する予定です。

タカハシ 面白いのが、大学では物理学を専攻されていたと。超新星爆発の残骸を、電波望遠鏡で観測したデータを解析してらした、というようなことを耳にしております。

デグチ その通りですね、ハイ。

タカハシ しかし海外ミステリ等もお好きで。

デグチ そうですね、好んで読んでいます。

タカハシ 何を間違えて文春なんかに来てしまったのかというと、そこで間違えていた(笑)。そんなデグチさんなんですが、スティーヴン・キングさんを読んだのは、実は今回が初めてだったと! あの、存在は認知されていたんですか。

デグチ それはもちろん。

タカハシ どういうイメージだったんですか?

デグチ ……巨匠。

タカハシ 巨匠(笑)。巨匠ですよね。それは間違いない。

デグチ 作品数がすごく多いので、どこから入ったらいいのかがわからなくて。けっこう完璧主義みたいなところがあって、シリーズものは最初から、作家の方はデビュー作から順々に最新刊まで追っていく、というのが自分のスタイルだったので、ちょっと手を出すのがしんどいな、と思うような作家のひとりでした。

タカハシ なにしろ50周年ですからね。しかもきわめて多作な人で。中編や短編もバンバン書くし、4年に1作とかじゃなくて毎年どんどん長編も出てきちゃう。確かに、なかなか入口が難しそうです。さて、今回は僕が本づくりを担当したんですが、僕もキングさんの本を担当するのは初めてで。しかも、読者の方々にお叱りをめちゃめちゃ受けそうな予感もするんですが、なんなら文芸ものもほとんど作ったことがない。今までほぼノンフィクション担当で。さらになんならその前はスポーツ雑誌の「Number」編集部だったという。

デグチ それはけっこうナンですね(笑)。

タカハシ 理系のデグチさんの前で言うのもナンですけど、科学ノンフィクションとかつくっていて。『直立二足歩行の人類史』(注:古人類学者が二足歩行の起源を追う。面白い)とか、『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(注:2022年ノーベル賞のスヴァンテ・ペーボ先生の自伝的ノンフィクション。面白い)とか、そんなものばっかりだったんです。そんな、「はじめてのキング」な人たちが編集し、営業しているんですが。まあ、怒られたらそれを任せた上の人が悪い、ということで。

デグチ (笑)。

初めてのゲラが超重量級

タカハシ 今回の『異能機関』を、デグチさんはゲラで読んでくれて。ファーストインパクトはどうでしたか。

デグチ ……二段組、上下巻で。

タカハシ (爆笑)。

デグチ とてつもないものをサラっと渡されたなと(笑)。

タカハシ 重っ! と。でもこれ、キングのなかでは標準より少ないくらいですから。普通は二段組、上下巻各500ページとかですから。

デグチ そう考えたら、タッチしやすいほうなんですね。

タカハシ キングの長編としては、分量的にはかなりリーチしやすいほうだと思います。で、いきなりアラフォーというか40歳すぎのおじさんが出てくる。

デグチ タカハシさん全然見えないですよ。

タカハシ どもども……え、僕の話? ごめん、アラフォーっていうのは準主人公のティムの話のつもりだった(笑)。僕がアラフォーであることもサラっとばらされたけど(注:実際はそれどころかアラフィフに近い)。

デグチ す、すみません(笑)。

タカハシ いえいえ(笑)。というところから始まって、2章でやっと主人公の天才少年ルークが出てきます。すでに読まれている方もいらっしゃると思うので言ってしまうと、速攻で誘拐されちゃう。

デグチ けっこう早い段階ですよね。

タカハシ そうなんです。これからデグチさんには過去作を掘っていってもらえればと思いますけど、キングの序盤は登場人物の日常生活がしつこいくらい書き込まれる、ということがけっこうあるんです。まあ、今作でもアラフォーのおじさんの(笑)ティムの話がまるまる1章書かれてはいるんですけど。

デグチ でもあれはあれですごく面白いし、かなり気になるところで終わってルークの章になりますよね。

タカハシ というところから話が加速していく、という感じなんですが。デグチさんのような若い人は、普段読まれているようなミステリとかSFとかと比べてみてどんな感じを受けるものなんでしょう。

デグチ ……サラっと残酷なことを書くなあというシーンが多くて。

タカハシ あー、それはそうだ。

デグチ 序盤の序盤でルークが誘拐されるところで、もう残酷な描写が出てきて。あれ、その話、そんなすぐ流していいの!? みたいな。物語はそこから容赦なく進んでいくんですけれど、私の心はズタズタに(笑)。

タカハシ ひええ。

デグチ でも全体としてとにかく先が気になる。上下巻を通じて、常に先が気になる話だなあというのは、一貫して感じました。

タカハシ そうですね。見本で読んでいただいた方や、フラゲしていただいた方の感想もツイッターなんかで見ますと、「ページをめくる手が止まらない」、ページターナーである、というものが多いなと。もちろんキングはどれも、ページをめくる手を止まらせない、というものがほとんどなんですけども、やっぱり軽快なタイプのものと、みっちりネチネチ書かれているものもあって、今回はかなり軽快なほうなのかな、ということは思いましたね。

デグチ 確かに、話が進まないモヤモヤみたいなものは全くなく。むしろ早く早く、みたいに、物語の進むスピードと、読者が先を急ぎたいスピードが一致しているというか、一緒にドキドキしながら、一体感を持って読めました。

タカハシ なるほど、そうですよね。ちなみに、長年担当している、僕の上司の永嶋氏とかになると、何も起きないところがいい、と。

デグチ もはや(笑)。

タカハシ もはや、何も起きないキングが好きだ! と。ちょっとマゾなのかな、と思うんですけれど(笑)。というようなベテランの読み手の方もいらして、それはそれですごく納得感があるんですが、今回みたいにストーリーがどんどん転がっていくタイプも、これはこれですごいな、と。
 もともと、キングって『IT』なんかも文庫では4巻組だったり、『ザ・スタンド』も4巻組ですし、すごくねっちり、みっちり書く作家であることは確かです。でも、訳者の白石朗さんがおっしゃっていましたけど、キングはネットフリックスとかの連続ドラマが好きみたいで。ツイッターでも感想をつぶやいていて、「観てるんだ!」とみんな驚くみたいな。近作ではそういうものを、70過ぎてちゃんと影響として取りこんで、3つくらいの視点の話がスピーディに切り替わりながら、「待て次週!」みたいな感じでどんどん進んでいくという書き方をマスターしているというあたり、さすがは大作家だな、と思いましたね。

最初に読んだのがこれで本当によかった

タカハシ 読み終わったデグチさんの読後感としては、ストーリーはミステリっぽさが残るのか、ホラーというか怖さが残るのか、超能力のSF感とか、どのへんが印象に残りましたか。

デグチ 一番印象に残るのは、やっぱり超能力の話ですね。あまり言うとネタバレになるのでアレですけれど。わかってくださる方もいると思います。

タカハシ ちょっとした超能力者が、大勢集められて「なんだそりゃ」的なことが起きる。確かに、ありそうでない展開ですよね。デグチさんはあまりドラマとかは観られなくて、どっちかというと書斎派でいらっしゃる。

デグチ そうですね、ほとんど本です。恥ずかしながら。

タカハシ いえいえ。僕もどちらか言うとそういうほうです。で、ネットフリックスで話題になっていた『ストレンジャー・シングス 未知の世界』という作品が、ベテランの人に言わせると、キングを始めとする80年代のネタというかオマージュが満載なんであると言われていて。それが、超能力を研究する謎の機関に能力者が捕らえられているという設定だということで、本作ではキングがそれを逆にオマージュした、行って来いみたいなことが起きたとも言われていますね。それで、帯にも『IT』ミーツ『ストレンジャー・シングス』だ、なんて風呂敷を広げたんですけど。そういうものだったので、デグチさんみたいな若い人にもアピールするんだ、ということが分かったのは、僕らとしてもすごく力になりましたね。

デグチ たぶん、キング初心者の人こそ楽しめるんじゃないかな、と思っていて。ずっと緊張感が続いて、ドキドキドキドキ……となるので。序盤の序盤から、最後の最後までどういう展開に転ぶかわからない。それプラス、章タイトルも、ネタバレしてこないタイプで、先が読めないですよね。

タカハシ あー、確かに。謎めいた章タイトルが多いです。

デグチ 私は目次の章タイトルを見て、だいたいこういう展開になるのかなと予測してしまう癖があるんですけれど、今回は上下巻ともに「どうなる??」という感じのタイトルが多くて、最後の最後まで気が抜けなかったですね。

タカハシ 上巻の目次が「夜まわり番(ナイトノッカー)」、「神童」、「粒々の注射(ショッツ・フォー・ドッツ)」、「モーリーンとエイヴァリー」、「脱走」。

デグチ 「脱走」はまあわかりますけど。

タカハシ まあそれは脱走するのかな、と思いますけど、基本的に意味不明ですよね。モーリーンって誰やねんと(笑)。

デグチ 読んだことのない人なら、キングがどういう作風なのかというのも予知できない方が多いでしょうから、よりそれが楽しめるというか。楽しみが倍増するんじゃないかなあ。

タカハシ デグチさんは読む前に、あえて情報をすべてシャットダウンして向かったとか。

デグチ 「何も言わないで!」という状態で読んで(笑)。すっごく面白くて、夜中もひたすら読んで。どこで止めたらいいんだ! という。止める場所がないんですよ。休憩できるところがない。

タカハシ だって会社の周りの人、キングだったら必ず何かしらある人が多いでしょう。ちょっと油断して話しかけたら、いやいや『ミザリー』が、『シャイニング』が、『ザ・スタンド』でしょ、といろいろ言ってくる人がいると思うんですよ。それにあえて耳をふさいで。

デグチ もう、すーごく楽しかったです。初めて読んだのがこれでよかったな、と本当に思いました。

タカハシ はああ、嬉しいですね……(じーん)。

邦題決定秘話

タカハシ これ、原題は『The Institute』で、〈研究所〉という施設の名前がそのままそっけなくタイトルについていたので、邦題を考えるのにすごく難渋して。たまに、そういうのがあるんですね。最近だとキングの『Revival』という作品に永嶋さんが『心霊電流』とつけていて。それだけだとだいぶん意味不明なんですけど(笑)、読むとぴったりで、なるほど! というナイスなタイトルなんです。今回も、『研究所』ってわけにいかないじゃないですか。

デグチ まあまあまあ。

タカハシ さすがにそれはなあ、と思って。じゃあ『○○研究所』かなあと思ったんですけど、いまいち緊張感がないんですよね。『悪夢研究所』みたいなのをいろいろ考えたんですけど。で、ちょっと悪いことを企んでいる感があるほうがいいんじゃない、という話になって。『ナントカ機関』なら、戦争中とかの日本のヤバい機関みたいな感じかなと。

デグチ 「研究所」だと私的な感じがしますけど、「機関」なら公的な匂わせがありますよね。

タカハシ そうそう。国がやってるものみたいなね。というので、最終候補に「異能」ってくっつけたのを思いついたときには「キター」と思って興奮して、ロンドンにいる永嶋さんにメールして(注:ブックフェアで渡英していた)。ただ、そのあと検索してみたら、WOWOWのドラマのサブタイトルで異能機関、とついているのがあった。なんだよ~、と思ったんだけど、まあタイトルに著作権はない、と言いますから。いいんじゃないかな、と。
 それで、最後の候補が『異能機関』と、『超常機関』だったかな。このどっちかがいいかなあとなったときに、デグチさんや皆さんにも相談しまして。そうしたら、『異能』だとおっしゃったんです。そうかそうか、と思ったんですけど、実はアラフォーと(注:アラフィフ)、20代のデグチさんで「異能」という言葉の捉え方が意外と違ったんですよね。ということに気づかされた。なんだろう、ラノベ的なものなのかしら?

デグチ まあそうですかね。ラノベでもそうですけれど、要は他の人と違う力を持つ、超能力にしろ魔法にしろそうなんですが、人と異なる力を持つことを「異能」というのをよく聞くなと。「超常」だと、SFちっくなものが前に出てくる感じがして。主人公は子どもたちなので、私の感性で言っていいのかなと思いつつ、最近の子は「異能」のほうがとっつきやすいんじゃないですか、という話にはなりましたね。

タカハシ ですよね。僕の印象だと、「超常」には超能力感がある。一方、「異能」って、超能力とかよりも、長年職人が修行して身につけた特殊な能力、というような印象がある言葉だったんです。野球で言ったら、バントだけがすっごく上手い選手を異能の野球人とか呼ぶみたいな(注:おじさんはすぐ野球にたとえます)。
 そういうところでややためらいもあったんですけど、若い人からすると異能バトル的な言葉に、超常能力の印象があるんだな、ということを聞いて、ああ、じゃあそれがいいじゃん、と思って(笑)。若い読者が興味を持ってくれるといいなということでこうしたんです。それで、あとで気づいたんですけども、これの中国版が先に出ていて。そのタイトルが『異能研究所』なんです。

デグチ おおおお。

タカハシ そうだったのかあ、と。時系列からすると、調べた読者の方には中国語版を参考にしたのかな、と思われると思うんですが、全然気がついていませんでした(笑)。

デグチ 向こうにもそういう風潮があるんですかね? 面白いですね。

タカハシ どうなんですかね? 気になるところですよね。中国語で「異能」というのがどういうふうに捉えられる言葉なのか。まあ、日本語のニュアンスの限りでは、『異能研究所』より『異能機関』のほうがちょっと謎めいていてかっこいいんじゃないかな、と思っていますけど。

デグチの推しキャラは……?

タカハシ デグチさんは本作のキャラクターもすごく気に入ってくれたと。イチオシが……?

デグチ ……ニックです。

タカハシ イケメンだから?

デグチ イケメンだから(笑)。

タカハシ 意外と安直?

デグチ 安直ですよね(笑)。いや、そういうところあるんです。いやいや、でも全員キャラが立ってますよね。誰が誰、ってすぐに思い出しやすい。翻訳ものだと、名前を覚えられないとかあると思うんですけど、『異能機関』は、こういう感じの人、というニュアンスを覚えやすいです。

タカハシ 翻訳もので、まず名前が覚えにくいっていうことはありますよね。で、この人何してた人だったっけ、とか。キングもあとがきで自分で書いていますけど、登場人物が何十人にもわたるし。〈研究所〉の人、〈研究所〉にいる少年少女もけっこう大勢だし、デュプレイの町の人も大勢いるので。こういう翻訳ものでは、登場人物表を必ずつくるんですけど、その人物説明が編集者の腕の見せ所というのもありますね。まあそれで、ニックがとりわけ……。

デグチ かっこいいです(ハート)。

タカハシ 黒髪で、ブルーの眼をしてて。

デグチ 特に、カリーシャ目線で見るじゃないですか。「はああ(ハート)」みたいな(笑)。かっこいい~。他の登場人物もかっこいいんですけど、ミーハーなので!

タカハシ それ大事です。ヒロイン的な存在で、〈研究所〉にいる少女のカリーシャはニックを好きになっちゃうわけですけど、デグチさんはカリーシャ目線なのね。

デグチ ありがとう、カリーシャ! みたいな(笑)。ほんのちょっとなんですけど、あるシーンが。そこはカリーシャ目線で語られているんですけど、そこで「かっこいい~」となって。好きになっちゃいました。

タカハシ おじさん的には、遠い過去にそういう甘酸っぱい気持ちがあったかなかったかももう思い出せませんよ……。俺にはこんな青春はなかった、というような気もしますが(笑)。そういう楽しみ方もできると。その気持ちを書ける70過ぎのじいさん(笑)がすごいな、と思いますが。

デグチ めっちゃ、よかったです(ニコニコ)。

「幻」の人物相関図はこうして生まれた

タカハシ で、本作の営業用の拡材のアイデアを相談しているとき、デグチさんが、人物イラスト相関図みたいなものがあるといいと思うんですよ、と言ってくれて。キャラ化しちゃって、イラストを描いてもらうといいんじゃないか、という話になった。じゃあ、キング50周年のロゴをつくってくれた若手デザイナーに頼んでみる? と。でも、彼はこれを読んでないから、どんなキャラクターがいるのか説明しないとな、と思って、僕が落書きみたいなものをこんな感じ? と描いたんですが。

デグチ めっちゃ、よかったです(笑)。

タカハシ ほんとなの? 今でも疑心暗鬼なんだけど。

デグチ サラっと描いてくださって。その話をしたあとに、私が下の階に降りて行って15分後くらいじゃなかったですか? 1時間もせずに来られて。

タカハシ そうでしたっけ。

デグチ なんか言い忘れたのかな? と思ったら、描いたんだけど、ってスッと。最初、イラストレーターの人に頼まれたのかなと思って。えっ、もう頼まれたんですか、って聞いたらタカハシさんが描かれたということだったんで、じゃあもうこれでと(笑)。

タカハシ サラっとって、そりゃそうだよ。人に説明するために描いてみただけなんですから(笑)。

デグチ えっ、編集ってこんな才能がいるんだって(笑)。

タカハシ いやいやいやいや。

デグチ ラフを印刷して見ていたら、営業部の人がみんな立ち止まって「誰が描いたの?」って。タカハシさんですよ、って言ったらええええ、って驚いていましたよ。

タカハシ ……というデグチさんの蛮勇によって、神をも恐れぬアイテムができてしまったわけですが。

デグチ すごく好評です。

ごく一部で話題になっている(?)「人物相関図」カラー版を公開します。

タカハシ このポップって、装画の藤田新策さんの名画と表裏になっているんです。これの裏に僕の落書きみたいなものがあるのはあまりにもマズいんじゃないかとドキドキして、藤田さんにはその話題を出さないようにしていたんですが。

デグチ めちゃくちゃ恐れてる(笑)。

タカハシ 昨日藤田さんとお会いしてお話ししていたら、バレてて(笑)。

デグチ しっかりチェックされてたんですね。

タカハシ やっぱりツイッターとかでご覧になっていて。でも、藤田さんはいいじゃないか、と優しくおっしゃってくださったんです。なんせ登場人物も多いし、場所も〈研究所〉とデュプレイと分かれていて、わかりにくいんだから、毎回あっていいよ、と。次も仕事受けたほうがいいんじゃない、みたいなノリでおっしゃっていただいて、本当にホッとしました。

デグチ 描きわけができていますよね。本文でちゃんと書かれているから。

タカハシ そうそう。これ、読む人によるのかなとも思うんですけど、昔、キングは読者に想像の余地を残すために、登場人物についてあまり明確には書いていないんじゃないかという話もあったようなんですが、今回はそうでもなくて、わりかし明確に外見が書かれているんですよね。〈研究所〉のナンバー2のスタックハウスのハゲ頭がてらてら光っている、というのがしつこく描写してあったり(笑)。

デグチ それが忠実に再現してあって(笑)。イラスト見たとき、そこにだけすごい熱意を感じました。

タカハシ ハゲ頭を光らせるということに妙に挑戦を感じて。慣れないフォトショップでグラデーション入れました。藤田さんからはひとつだけ、「ウェンディをもう一声美人に描いてほしかったな」と言われて。すいません、画力の問題です(笑)。そこは僕もわかっていたんですけど。ウェンディは北欧系の人で、たぶん、あまりかわいらしく見せないためかと思うんですけど、髪の毛をひっつめにしているという描写がしてある。だけどそれでも美人で、色白なので頬が赤くなるのが隠せない、みたいなことがかなり細かく書いてあるんです。

デグチ ですよね。ティムも、狙うにしてもレベル高いぞ、とか言われていて。

タカハシ もう一人のヒロイン的存在だし、これは描かないと、と思ったんですけど、髪をひっつめている感じの人をすごく美人に描く、ということが僕の画力では無理で。涙を呑んで前髪をつけました(笑)。

デグチ そういうことだったんですね。今、ピンときました。

タカハシ かわいさみたいなことを表現するには、髪の毛とかでごまかさないと、顔で表現できる画力はないので。

デグチ でも、全員違う顔になってますよね。私が描いたら全部一緒になります。

タカハシ たぶん、あれ以上描くと、そろそろ同じ顔の人が出てくる感じです。……というようなことは、ポッドキャストでお話を聞いていただいている方には見えないと思って安心しているんですけど(笑)。まあまあ、それもナンでしょうから、テキスト版もつくろうかなと思って。デグチさんのお許しを得て、藤田さんも許してくれたということで、そこに人物相関図も上げようかなと思います。

折り込み冊子に収録された線画版「人物相関図」。書店によってはお持ち帰りいただけるはずです。


次に読むべき過去作は?

タカハシ 長くなってしまったのでそろそろ締めたいと思いますが、これからキング50周年キャンペーンということで、また次作、次々作とありますけども、どうでしょう、引き続き読んでいただけますでしょうか。

デグチ いやあ、もちろんです。今、読み終わってけっこう「ハア……」となっていて。次だ、次が欲しい……! となっているので、2作目3作目も、読んで浸ろうかなと思っています。

タカハシ 過去作、何を読んだらいいのかという問題もありますよね。

デグチ 気になっている作品はいろいろあるんです。『11/22/63』とか。めちゃくちゃ気になっていて。これは読まねばと。

タカハシ ああ、そうですね。『11/22/63』が、次にいいんじゃないかと思います。『IT』とか、キングの代名詞的なホラーのほうにいくと、もしかすると怖すぎるかも(笑)。『IT』は長いし。まあ、『11/22/63』もじゅうぶん長いですけど。

デグチ でもストーリーにはそそられています。

タカハシ 『異能機関』で初めてキングを読まれた方が次に『11/22/63』というのは、僕も大好きな作品なので、お勧めかなと。皆さんぜひ、キングの50周年祭りを楽しんでいただければと思います。どうもありがとうございました。

デグチ ありがとうございました。


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定価:2,970円(税込)発売日:2023年06月26日

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