- 2023.08.02
- 特集
【「王様のブランチ」に登場】「“わかったはずなのに、悔しい!”を味わっていただきたかった」――ミステリーランキング4冠を獲得した米澤穂信さんの最新作は、読者への挑戦状!
『可燃物』(米澤 穂信)
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#エンタメ・ミステリ
2022年、『黒牢城』で史上初のミステリーランキング4冠を獲得した直木賞作家・米澤穂信さん。これまで日常の謎を解き明かす青春ものや本格、イヤミスなど幅広いジャンルをてがけてきた米澤さんだが、待望の最新ミステリー『可燃物』(文藝春秋刊、7月25日発売)は、自身初の警察を舞台にした作品。さまざまな種類の謎解きを楽しめる5編を収録した本作は、「米澤さんから読者への挑戦状」ともいうべき作品となっている。
7月29日土曜日、TBS系『王様のブランチ』のBOOKコーナーでもこの本を大特集。米澤さんのインタビューが放送された。
冒頭、レポーターの鈴木美羽さんが米澤さんに読後の感想を伝えるところからインタビューは始まった。
――本当に見破れなかったです! ヒントが書かれているのに、分からない! そのもどかしさも楽しみながら読ませていただきました
なんでわからなかったんだ! という思いを味わっていただきたかった
米澤さん「いやあ、一番うれしい感想をいただきました。ミステリーを読んだ時に、『まったく想像がつかなかった!』というミステリーの楽しみ方と、『しまった!(犯人やトリックが)わかったはずなのに!』という、悔しい読み方の2つがあります。今回は『ああ、こんなに手がかりが散りばめられていたんだから、きっとわかったはず、なんでわからなかったんだ! 悔しい!』という思いを味わっていただきたかったので、よかったです。書いた甲斐がありました!」
番組では収録5編のうち、表題作である『可燃物』を詳しく紹介。
――今回の「可燃物」は、どんな仕掛けのミステリーですか?
米澤さん「古典的なホワイダニット(Why done it?)、いわゆる動機当てですね。いったい犯人はなぜそれをやったのか、というのが問いになるミステリーです」
本作の主人公である群馬県警捜査第一課の葛(かつら)警部は、太田市で発生した7件の連続不審火の捜査を担当している。その日は一件目の火災現場を訪れていた。消防の人間によると、燃えたのは収集日の前夜に出されていた可燃ごみ。幸いにも火の手は弱く、第一発見者によってすぐに消火されたという。他の放火も、同様にゴミ置き場の生活ゴミばかりが狙われたが、いずれも大事には至らなかった。
放火犯は同型の犯行を繰り返す傾向が強い。葛は、過去の火災事件の資料にも目を通す。だが、今回の放火は今までのどんな事件にも当てはまらないように感じ、その犯行動機をつかめずにいた。
燃えるゴミだけが狙われるのは、なぜなのか.....。
――この作品を思いついたきっかけはありますか?
米澤さん「今回はホワイダニットを書いていこう。では人間は、一体どういうときに『自分のやったことを隠したい』と思うだろうか。隠してでも、見られないようにしてでも『どうしてもやりたい、やらなければならないんだ』という切なる動機というのはどういうものがあるんだろう、そういう心の動きを見つめるところから始まっています」
犯人は、目的を達したのかも知れない。それならば――
依然として犯人の動機は不明だったが、捜査を続けるうちに3人の不審人物が浮上してくる。1人目は19歳の少年。公園で仲間と火の付いたライターを投げて遊んでいたという。
2人目は大野原という年配の男。ゴミ置き場で不自然な動きをしていたため調べたところ、大野原の前の職場で大規模な火災事故が起こっていたことが判明。そして3人目は、傷害と恐喝の前科がある高柳。火をつけたタバコを捨て去ろうとする姿を刑事が目撃した。しかし火災には至らず、つかまえることができなかった。
そんな中、なぜか犯行がピタリと止まり、葛たち警察は犯人を特定できないまま、捜査は行き詰まってしまう。
なぜ突然、放火は止まったのか。
犯行動機が気になっていた葛の頭には、ある一つの考えが浮かぶ。
「犯人は目的を達したのかもしれない。それならもう二度と放火は起きない」
すると、今まで見えなかった一連の放火の共通点が浮かび上がり、葛は犯人の目的を確信する。連続放火犯のその驚くべき犯行動機、そして全てが明らかになったとき訪れる、思いもよらない結末とは?
――最後、読んだ時に胸がキュッと苦しくなってしまいました。「私も一歩間違えたらそうなってしまうかもしれない」と考えながら読ませていただきました。
米澤さん「ありがとうございます。今回私がやろうと思ったのは本格ミステリーであって、『謎解きを書くための小説』でした。しかし、その謎解きを成立させるために被害者の心、加害者の心、社会の状況、そういうものを書いていくと、これが自然と、人の心とか、我々が住んでいるこの世の中であるとか、そういうものを書いていくことにもつながっていく。それが小説の膨らみとか豊かさとか奥行き、そういうものを呼んできてくれる。そういうかたちで書ければいいな、と思っていたので、そうなっていることを、自分自身でも願っています」
もう一文字も読み飛ばせない!
鈴木さんは、5作を読んでの感想をこう話した。
「とにかく解けそうで解けなくて、でも残りのページがどんどん減って行っちゃう。でもそれぞれ短い物語の中で、毎回鮮やかに、驚くようなかたちで、葛警部が事件を必ず解決してくれるんです。すべての謎が解けると『ここにもヒントあったじゃん!』『この一言が解決の鍵だったんだ!』とわかったりする。もう一文字も読み飛ばせない小説なんです。是非みなさんにもこの謎に挑戦していただきたいです!」
表題作『可燃物』はホワイダニットだったが、米澤さんは他の4編でハウダニット(どうやって犯行が行われたか)やフーダニット(誰が犯人か)など、さまざまなタイプのミステリーで読者を翻弄、最高の読書体験が待っている。
名手が仕掛ける謎を、あなたは解けるだろうか?
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