スーパーの魚はなぜマズい!? 世界に誇る日本の魚食を考え直す
- 2023.12.27
- ためし読み
今、日本の漁業は大きな転換期を迎えている。魚の水揚げが低調なことに加え、「魚より肉」といった食生活の変化などによる「魚離れ」で消費も鈍化するばかりだ。昭和の時代に「儲かる職業」であった漁師も減り続けている。
こうした危機を受け、国や漁業者団体は「儲かる漁業」をキーワードに、国内の流通・消費を含めた水産業の立て直しを目指しており、それと同時に、魚食の拡大が顕著な海外へ向けて「輸出増大策」を進めている。
そうしたなか、2023年8月下旬に東京電力福島第一原発の処理水が海洋放出され、漁業者が懸念を抱いていた「風評」が日本に大きな打撃を与えることになった。中国が日本産水産物の全面禁輸を強行し、多くの魚介が行き場を失ったのだ。
日本の魚が中国などに輸出・消費されている現状は、あまりリアリティーがないかもしれない。ところが、日本産水産物の輸出額は、中国・香港を合わせて年間約1600億円で、輸出額全体の4割以上に及んでいた。これを直視すれば、依存度の高さが実感できるだろう。
国は農林水産物全体の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円とする目標を掲げており、うち水産物については2025年に0.6兆円、2030年に1.2兆円を目指すとしていた。しかし、処理水の海洋放出によって、下方修正が必要な状況に陥った。
国内に目を向けると、日本の魚食文化は、食生活の多様化や個食化のほか、スーパーの台頭をはじめとする流通事情の変化にも大きく左右されてきた。なぜならば、冷凍技術が発達し、遠方からも安定して鮮度の良い魚が確保できるようになったことで、スーパーの魚コーナーや回転寿司では、色とりどりの「輸入魚」が幅を利かせるようになったからだ。「輸入・冷凍魚」に押され、現状の流通では「国産天然魚」、特に大衆魚が消費されにくくなっている。
このように日本の漁業・水産業は深刻な状況に置かれているが、本来持っているポテンシャルは高く、筆者は「捨てたもんじゃない」と見ている。日本はかつて水産大国と言われ、全国津々浦々、世界に類のないほど多種類の魚介を生産し、地域ならではの魚食・郷土料理も多彩である。日本の「うまい魚」にスポットを当てることで、世界に誇る日本の魚食を将来につなげたい。そんな思いでまとめたのが本書である。
「はじめに」より
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