近年、様々な研究でわかった「食べ物」と「見た目の加齢」の関係性。何をどう食べたら老けないのか……ジャーナリスト・笹井恵里子氏の著書『老けない最強食』(文春新書)は、各食品のスペシャリストに徹底取材している。
ここでは、本書から一部抜粋して紹介。老けない「水」の摂り方とは?(全2回の1回目/続きを読む)
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「食」ではないが、体にとって最も大切なものといえば「水分」だろう。あなたは普段、どのような形で水分摂取をしているだろうか。本章では老けないための水分の摂り方や、具体的に何を選べばいいのかを、徹底解説する。
体から出ていく水分は一日におよそ2.5Lとされる。尿が1.4L、便が0.1L、呼吸、発汗による皮膚からの蒸発がそれぞれ0.5Lだ。一般的に1.3Lほどは食事などから得られるが、残りの1.2Lは飲料で補給しなければならない。
実は加齢に伴って体内の保水能力が低下するため、年を取るほど乾燥を防ぐための「水分」が重要になる。
渇きを感じた時は、すでに…
医学博士で管理栄養士、日本医療栄養センター所長の井上正子氏はこう話す。
「人の体の約60%が水分です。のどの渇きを感じた時は、すでに体内水分量の1%が喪失し、血液粘度が高まっている状態。ですから、のどが渇く前に飲みたいですね。適宜水分を摂ることで血液粘度を下げ、血栓や血管のつまりを予防し、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを低下させます。
また痛風や尿路結石も水を適切に摂ることで防げるとされていますし、膀胱炎も水分を十分に補給すると、尿道や膀胱に増殖する細菌を洗い流すことができ、予防・治療に役立ちます」
飲み物の全てのベースには「水」がある。
血液の大半は水分でできており、その血液が体を巡りながら全身の細胞に栄養分と酸素を運搬しているのだ。逆にいうと水分不足で血液循環が悪ければ、体のすみずみまで栄養や酸素が行き渡らず、細胞の新陳代謝が悪くなって免疫細胞の機能低下を招きやすくなる。
管理栄養士の望月理恵子氏もこう補足する。
「水分を摂ることで血液の流れをスムーズにしたり、水分が汗となって体温の上昇を防いだり、免疫機能を正常化させます」
女性が気にしやすい「むくみ」も、水分の摂りすぎだけが原因ではなく、代謝が悪くなった状態。普段からこまめに水分を摂取する習慣がある人ほど、むくみにくい体質になるのだ。
一度に飲む量にも要注意
それでは、どのタイミングで水を飲めばいいのか。井上氏に「水分摂取のタイムテーブル」を示してもらった。
●1回目/起床時 人は寝ている間にコップ1~2杯の汗をかく。一日のなかで血液粘度が高いのが朝
●2回目/朝食時 食事前に飲むことで胃腸が刺激され、消化を助ける
●3回目/10時頃 緑茶やコーヒーでもOK
●4回目/昼食時 食事中に飲むことで適度な満腹感が得られ、食べすぎを抑制できる
●5回目/15時頃 カフェイン少なめのハーブティやほうじ茶、麦茶でも
●6回目/夕食時 アルコールを飲む場合、特にしっかりと水を飲もう
●7回目/入浴前後 入浴では想像以上に水分が失われる。十分な水分補給を
●8回目/就寝前 睡眠中に失われる水分を事前に補給
一日8回、一度に飲む量はコップ一杯弱(150㎖)がいいという。「一度にたくさん飲むと、体の水分量を一定に保とうとする生理作用により、せっかくの水分があっという間に排泄されてしまう」そうだ。
水の温度は常温より少し冷たいくらいの10~15度が適している。口に含んでのどを通り、胃に入る時にちょうど常温になるため、体に負担をかけずに飲むことができるのだ。
水道水でもOK?
また「水道水」と「ミネラルウォーター」の違いについて述べておこう。
意外と知らない人が多いのだが、実は水道水は一日2L、生涯飲み続けても人の健康に影響を生じないとする51項目の水質基準(水道法)をクリアしている。食品衛生法で安全性を確保した「ミネラルウォーター」とは安全性の保証レベルが違うといっていい。
したがってコストが安いことと品質の安定性からいえば水道水。一方で機能的な面を追求するなら市販のミネラルウォーターも利用しやすい。しかし一口にミネラルウォーターといっても玉石混交。再び井上氏に解説してもらった。
「市販のミネラルウォーターの場合は『ナチュラルミネラルウォーター』と表記されているものが天然ミネラルを含む天然水。私たちが抱いている天然水のイメージに最も近い水です。
ほかに特定水源から汲み上げられた地下水で、手を加えない『ナチュラルウォーター』や、ミネラル分を人工的に調整した『ミネラルウォーター』、本来の成分を大きく変化させる処理を行った『ボトルドウォーター』もあります。
ウォーターサーバーには、原水の本来の成分を大きく変化させる処理を行った『ボトルドウォーター』が多く使用されています。選ぶ際にボトルのラベルで確認しましょう」
おなかが弱い人は…
そしてカルシウムとマグネシウムの量が多いほど「硬度」の高い水だ。望月氏は、老けないために「硬度101以上の中硬水や硬水」を勧める。
「日本人は硬度が低い軟水に慣れ親しんでいますが、基本的にはふんだんにミネラル成分を含んだ硬水のほうが、さまざまな効用を期待できます。ミネラルには、歯や骨の主成分となるカルシウム、体内の水分バランスや血液の量を維持するナトリウム、ナトリウムとともに血圧を正常に保ったり、筋肉の働きを良くするカリウム、代謝のサポートやホルモン分泌に関わるマグネシウムなどがあるためです」
ただし、硬水は腸を刺激するため、おなかが弱い人は注意を。
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