- 2024.09.13
- インタビュー・対談
「ベストパートナー賞があれば1位を狙いたい」声優・入野自由が語る、田村睦心との“いいコンビ”関係
「週刊文春」編集部
入野 自由(声優)――クローズアップ
出典 : #週刊文春
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
阿部智里氏のベストセラー小説「八咫烏(やたがらす)シリーズ」がアニメ化される。八咫烏とは日本神話にも登場する三本足の烏だが、人間の姿に変身できる八咫烏の一族が、異世界〈山内(やまうち)〉を縦横無尽に飛びまわる。平安王朝風の雅な風俗に、朝廷の権力争い、さらに〈山内〉という世界の謎を描く、壮大なファンタジーだ。
〈山内〉を統べる族長一家が宗家、その長が〈金烏〉だ。次の金烏となる謎多き皇太子・若宮役をつとめたのが、人気声優の入野自由さんだ。
「普段は爽やかで溌溂としたキャラクターを演じることが多いので、クールで掴みどころのない若宮役は、僕にとってチャレンジでした」
類まれな美貌をもつ若宮は、金烏の中でも何十年かに一度生まれるという〈真の金烏〉とされる。にもかかわらず、公務を果たさず花街に通うなど、“うつけ”という評判だ。北領・垂氷郷郷長の“ぼんくら次男”雪哉は、ひょんなことから若宮に仕えることに。
「若宮はポーカーフェイスで、感情は表に出しません。なので、演じる際には“内には何かを秘めている”ということを意識して、あとは、ゆっくり丁寧に、淡々と話して、高貴な空気感を出すようにしました。
彼自身がミステリアスな存在ではありますが、その謎は物語の展開の中で明らかになっていくものなので、ミステリアスに演じようとか、意味深に喋ろうということはあえてしていません」
自身の兄を追い落として世継ぎとなった若宮の周囲は敵だらけ。一方で、大貴族から4人の姫が遣わされ若宮の后選びが始まるが、若宮は特に興味も示さず、姫君たちのもとを訪れる様子もない。そんな若宮に雪哉は戸惑うが……。
「雪哉からしても、姫君たちからしても、若宮が何を考えているか分からないですよね(笑)。本人も『それでいい』と思っているところが潔い。若宮は周りにどう思われようが自分の思った通りに物事を進めていくことだけを考えている。でも、どこか憎めないところがあるのは、彼の根っこの部分に優しさや思いやりがあるからだと思います。そこがまた、人たらしですよね」
若宮に振り回されつつも、優秀さを発揮する雪哉。陰謀渦巻く朝廷内で、2人は様々な危機を乗り越えていく。果たして、后選びの行方は。そして、若宮と雪哉はよき主従となれるのか――。
「雪哉役の田村(睦心)さんとは、今回のようなバディ役を演じるのは初めてですが、もしアニメにベストパートナー賞があれば1位を狙いたいくらい、いいコンビになりました。最初は『この2人、本当に大丈夫なのか!?』という感じなのですが、雪哉のポテンシャルを引き出せるのは若宮だけだと思うんです。周りからぼんくらと言われている雪哉の本質を見抜いているのは若宮だけだし、たとえ見抜けたとしても、本領を発揮しないのが雪哉なので(笑)。それを、『本気出せよ』と煽るのではなく、しっかり追い込んで勝手にその能力を発揮させてしまうのが若宮です。
逆もしかりで、過去にあった出来事も含め、若宮が本心を明かせる相手は雪哉だけだったと思うんです。仲がいいということではないのですが、互いの本当のいいところを引き出せる、そんなベストパートナーだと思います」
コロナ禍だったため、アフレコはいくつかのグループに分かれた分散収録だったというが、
「図らずもそれが作品に合っていたと思います。現場の雰囲気もとてもよかったですね。キャスト同士でそれぞれの解釈を披露したりして、皆が作品の虜になっていました」
いりのみゆ/1988年、東京都生まれ。2001年『千と千尋の神隠し』「ハク」役で脚光を浴びる。その後も「機動戦士ガンダム00」シリーズの沙慈・クロスロード役、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の主人公・宿海仁太、「コードギアス 亡国のアキト」の日向アキト役、「おそ松さん」のトド松役などで活躍。俳優として舞台を中心に出演する他、歌手としても活動。
アニメ『烏は主を選ばない』