〈「財源はあります。増税の必要はありません」“税の大家”が消費税を上げる必要はないと断言する納得理由〉から続く
「財源はあります。増税の必要はありません」そう断言するのは昨年3月に亡くなった租税学者の富岡幸雄氏だ。日本の税理士第一号としても知られる“税の大家”は日本の税制をどのように見ていたのだろうか。
ここでは『消費税が国を滅ぼす』より一部抜粋。大企業が払っている“法人税の真実”を解き明かす。(全2回の後編/前編を読む)
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税率の国際比較
財務省のサイトをみると、「法人実効税率の国際比較」として、2018年1月現在の各国の国税と地方税の合計の数字が出ています。
この数字だけみると、法人税、法人住民税、法人事業税についての、日本の「法定総合税率」(メディアや財務省などが「実効税率」と表記している数値)は低くないといえます。むしろ高いと思われるでしょう。
しかし、第1章でも申し上げたように、私の実証分析によれば、日本の法人課税の負担率は決して高くありません。税法に「書かれている税制」と、実際に「行われている税制」の間にある税制ギャップが大きいのです。
大企業の税負担は非常に軽い
グローバル企業が中心となっている財界は、「日本の法人税率は先進国の中で極めて高い」と被害者意識をむき出しにしていますし、そのお先棒を担ぐメディアや政府までも、その主張に同調しています。
そればかりか政府税調までも、法人税の法定総合税率を「20%台まで下げる」と政府に要求し、2016年度の税制改正で、それを実現させています。
しかし実際のところ、大企業は計上している利益のわりには、きわめて少ない税金しか払っていません。
第1章の終わりで数字を挙げましたが、有所得(赤字ではなく利益を計上している)全法人をトータルにとらえて、実際の負担率を分析してみると、17.46%(2017年3月期・外国税額を含む)でした。
巨大企業の実際の税負担とは?
これは法律で定められている税率である「法定総合税率」29.74%(2018年度)の6割弱(58.7ポイント)に過ぎないのです。
とくに巨大なグローバル企業の負担率は低く、一方で中堅企業や中小企業は、法定税率に近い税負担を課されています。この点は後述します。
冒頭でも述べたように、必要以上に重い税負担を企業へ課すと国際競争力が失われ、結果的に日本の国力を削ぐことになることは承知しています。
しかし税収が減ったツケをまわされるのは、巨大企業ではなく市井の人々なのです。いま財政赤字が1000兆を超え、その改善を口実に、子どもから年金生活者まで負担を求める消費税が増税されようとしています。
その消費税を主な財源にして、法人税の減税が進められてきたのですから、日本経済の基盤である巨大企業が、実際にはどの程度の税を負担しているのか、それを踏まえた議論をする必要があるのではないでしょうか。
そこでこの後、個別企業の実際の税負担を検証するミクロ的な分析と、統計数値を利用して企業全体を観察するマクロ的な分析を通じて、日本の法人税負担に関する実相を明らかにするとともに、法人税制の真の問題点を示していきたいと思います。
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