第172回 直木賞候補に朝倉かすみさんの『よむよむかたる』が選出された。
「何から読めばいい?」「おすすめの本は?」という方に向けて、朝倉かすみさんご本人のエピソード付きで、絶対にハマるおすすめの5作品を厳選。
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『平場の月』(光文社文庫)
第32回山本周五郎賞を受賞したほか、第161回直木賞にノミネートされた作品(2018年に単行本刊行)。
50代の男女の出会いを描いた、大人のリアルな恋愛小説。「(執筆当時はまだ)男の人が女の人をケアするという作品が珍しいと思って書いた」という。編集者K(40代・男性)が号泣し、『よむよむかたる』の執筆依頼のきっかけとなった作品である。
朝霞、新座、志木――。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる――。
(『平場の月』 出版社サイトより引用)
2025年秋に映画公開が決定した本作。
堺雅人さんと井川遥さんのW主演で、監督は土井裕泰さん、脚本は向井康介さん。
原作者である朝倉さんが撮影現場を見学したところ、セロテープで補強するくらい本を読み込む堺雅人さんの姿に感激したそう。また、「居酒屋のシーンで、ビールを飲む時だけすごい可愛い顔になる須藤(井川遥)に注目してほしい」と朝倉さん。
『ぼくは朝日』(潮文庫)
昭和40年代の小樽を舞台に描かれる、小学4年生の朝日と家族の物語(2018年に単行本刊行)。
小さい男の子の話を書きたいという思いと、朝倉さんが子供だったときの”懐かしい小樽”を描きたいという思いから生まれた小説だ。
小学4年生の朝日は父と10歳離れた姉・夕日の3人で暮らしている。
母は朝日を産んだときに天国にとられてしまった。
同級生の富樫くんや近所のカズ坊さん、町の人との交流によって少しずつ大人を理解していく朝日は、ある日、心を痛めた夕日の前で場違いな発言をして、事態が急変する――。
(『ぼくは朝日』出版社サイトより引用)
「すごく好きな作品。今はない建物なども描かれているので、分かる人にしか分からない景色も多い」と朝倉さん。朝倉さんの思い出や懐かしさ、小さい男の子への憧れがぎゅーっと詰まった一作。
『肝、焼ける』(講談社文庫)
第72回小説現代新人賞を受賞した、朝倉かすみさんのデビュー作(2005年)。
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていく――。30代独身女性のキモ焼ける(じれったい)心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全5編。
(『肝、焼ける』出版社サイトより引用)
「酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』(2003年に単行本刊行)がベストセラーに。それまで20代女性の主人公が多かったんだけど、30代女性を主人公にして描いたのが当時は珍しかったんです」と朝倉さんは話す。
『田村はまだか』(光文社文庫)
第30回吉川英治文学新人賞を受賞した、初期朝倉かすみの代表作(2008年に単行本刊行)。
「とうの立った主人公(『肝、焼ける』)を書いてデビューしたので、40代の物語を描きたかった」と朝倉さん。
朝倉さんにとって初めての連載作品で、連作短編である。
深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。
(『田村はまだか』出版社サイトより引用)
「当時、勢いがあって、400字詰めの原稿用紙50枚に全部一晩で書いているんですよ」と朝倉さん。1、2回書けると「一晩で書ける女なんだ!」という気持ちに。部屋から見て月がゆっくり下がっていくのを眺め、「この位置で(いま書いているのが)30枚目だったらいける!」という勢いで執筆していた、と懐かしさを滲ませながら朝倉さんは話す。
※「編集者目線でいうと、一晩で50枚書くのは並大抵の人には不可能です」(編集K談)。
『よむよむかたる』(文藝春秋)
第172回直木賞候補作(2024年)。
小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。
月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。
最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。
それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。
持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。
なぜ老人たちは読書会を目指すのか。
読みが語りを生み、語りが人生を照らし出す。
幸福な時間が溢れだす、傑作読書会小説。
この物語は、朝倉さんが編集者とお母様について話したことが執筆のきっかけ。お母様が20年くらい読書会に参加しているという話をしていると、「読書会の話を書いていただけませんか?」と言われ、『よむよむかたる』を書くことになったそう。
「老人たちの読書会って、こういうやりとりをしながら進んでいくんだ!」という新鮮な驚きと、そのワンダー感を伝えたいという思いがあったと朝倉さん。
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ほかにも、盗作で芥川賞を獲りに行く2人の女子高生の物語である『てらさふ』など、朝倉かすみさんの注目の著書は数えきれない。
ぜひお気に入りの一冊を探してみては。
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『ピークアウトする中国』梶谷懐 高口康太・著
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