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すべてのビジネスは情弱ビジネス? 日本の資本の遍在をなだらかにするために

すべてのビジネスは情弱ビジネス? 日本の資本の遍在をなだらかにするために

前澤 友作,成田 悠輔

出典 : #文春オンライン
ジャンル : #政治・経済・ビジネス

 日本は株を持っている人が少なすぎる。今すぐ資本を分散して格差を是正すべき。そのために一人でも多くの人が株を持ち、資本主義に主体的に参加すべきだ――自身が提唱する「国民総株主」を体現するため、新サービス「カブアンド」を立ち上げた前澤友作さん。一方、発売されたばかりの『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』(文春新書)で心も体もデータ化され資本主義が煮詰まったこの先に、「お金が必要なくなる」未来を構想した成田悠輔さん。資本主義とは何か? お金のない世界を実現する方法とは? を語り合った。NewsPicksで実現したふたりの対談を前後篇でお届けする。#1

◆◆◆◆

爆速で会員100万人突破の「カブアンド」

成田 前澤さんは株配り事業「カブアンド」を創業されました。またの名を「情弱ビジネス」だと伺っています(笑)。そのお話からはじめて、最終的には株のない世界とか、お金のない世界みたいなことを想像できれば、と。株配りのカブアンドをはじめられてどれぐらいですか?

前澤 1ヶ月ちょっとたちましたね。

成田 開始から20日間で100万人を超えたと伺いました。

前澤 そうですね。会員登録が100万人突破で、サービスの申し込みは少し前の時点で35万件超えたところですね。順調です。

成田 そんな初速で伸びた事業、他にあるんでしょうか?

前澤 どうでしょう。例えば最近の例でいえば、PayPayさんの初動はすごかったんですよね。今回初動は大事だと思ったので、そこは少し参考にさせてもらいました。今のところ予測を軽く上回る形で着地できています。

成田 PayPayでさえ利用者数が100万人まで2ヶ月ぐらいかかったという説を聞きました。

前澤 じゃあうちの方がちょっと早いですね。ありがとうございます(笑)。

成田 実際にはじめてみて意外だった発見はありますか?

前澤 今回、皆さんのためを思ってというコンセプトを強調しているのに、なかなかそれが伝わらないことですね。利益を追求するビジネスではなく資本をもっともっと分散して皆さんで一緒に儲かりましょうと散々言っているにもかかわらず、「情弱搾取」と言われたり、前澤ばかり儲かるのかという話に行きがちで、そこは意外でしたね。たぶん何を言っても批判されるんだと思うんですけれど。

成田 批判されるぐらい盛り上がっているとも言えますよね。ほとんどの事業は批判するに値しませんし。

前澤 そうですね、賛否両論どちらも盛り上がっていますね。結果、カブアンドの認知が一気に広がったのでまあ良しとしようか、と。

『国民総株主』©幻冬舎

ビジネスの多くが実は「情弱ビジネス」ではないか

成田 最初に「情弱ビジネス」と冗談半分、半分本気で言ってみたんですが、考えてみれば不思議な批判の仕方ですよね。というのも、儲かるビジネスというのはほぼほぼ情弱ビジネスだからです。お金を払う側ができないことや知らないことを提供するからビジネスは儲かるわけで、お金を払う側は「情報弱者」ですよね。教育とか出版、メディアなんかは情弱ビジネスの典型です。立派に見えるビジネスの多くが情弱ビジネスであるにもかかわらず、前澤さんの事業だけが情弱ラベルをつけて叩かれてしまう。前回のお金配りの時にもそうでした。前澤さん個人が怪しげだからですかね(笑)。

前澤 今回、特に「国民総株主」という大義を前面に押し出しているぶん、そんなのはボランティアでやれと言われたり、みんなに株主になってもらいたいなら自腹切って啓蒙活動をして、それこそタダで株を配ればいいじゃないか、なぜそれとビジネスを結びつけけるのか、みたいな批判が多いですね。だけどビジネスとして持続的にやっていかないと、配れる株も底をついてしまいますし、成長させてみんなで株の価値を肥大化させていかないと意味がない。そこにビジネスありきということを忘れがちで皆さん批判されるんだと思うんですけれどもね。

 

なぜ「国民株主」構想なのか? 

成田 僕も似た疑問を感じました。というのは、「国民総株主」構想の動機は人によって資産や株から得る利益が違いすぎるという問題意識ですよね。実際、日本は先進国のなかでキャピタルゲイン、つまり資産から得られる収入の格差が大きい国だというデータがあります。だから、この富める者がますます富む格差問題にどう対処するかはたしかに大事です。ただ問題は、その処方箋として何がいいか? です。直接的でわかりやすいのは資産課税やキャピタルゲイン課税の強化です。それではなしに事業を通じてちょっとの株を配ってみんなに弱小株主になってもらうというやり方がなぜいいんだろうと思ったんです。どう思われますか?

©SAKIKO NOMURA

前澤 日本における資本の遍在は、ほとんどの人は持っていなくて一部の人だけが持ってるという、いわば頂上が極端に尖った山の状態だと思うんですよね。いま成田さんがおっしゃったのは、おそらくその尖った頂点にある資本を再分配して裾野に分け与えましょうという話だと受け止めました。一方で僕は頂点の位置は今よりもっと高いところに行っていいんだけれど、傾斜をもっとなだらかにしたいと思うんですね。すると急峻なアルプスの山々のようではなくて富士山のような穏やかな山にできる。

 山頂に向かう傾斜が緩やかになればなるほど、山の裾野も広くなるし全体のボリューム感は大きくなる。そうやって資本が一部に偏ることのないなだらかな分布を目指したいですね。

 

成田 今すでに持っている株や資産やそこからの利益をどう分けるかより、パイ全体をどう膨らまし、膨らむパイの広がり方をできるだけなだらかにしたい。つまり、ただの分配より成長を通じた分配に興味があるということですかね。

前澤 結局資本主義の市場に参加せずにただただ再分配を待つだけになってしまうと、いつまでたっても与えられる側であるという意識は変わらないですし、それでは社会や資本市場に主体的に参加できていないという感覚のままだと思うんです。だからやっぱり1株でも2株でもいいから今まで株を持ったことのない方々が実際に持ってみて、それこそ株主総会に出てみたり、たまには配当が入ってくるという体験を通じて、資本市場に参加するひとりとして一役を担ってほしいというテーマもありますね。

 

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成田悠輔「最近1人でお金が世の中からなくなる未来を妄想しています」前澤友作「お金が消えると価値の尺度はどうなる?」〉へ続く

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