「がんばって!」の握りこぶしが性的な意味に…いま、世界の常識を知る意味とは?
「常識」とは、社会一般の人が共通にもっている知識や考え方のことをいう。
ここでいう「社会」とは、国際社会から会社、学校のクラス、サークルなどの小さな集団までを含み、様々な「常識」がある。「常識的」な環境に浸りながら、「非常識」な異文化の話題、映像を、テレビやSNSを通じて楽しむ人は多い。
二〇〇一年に『常識の世界地図』を著して以降、スマホが普及し、人びとの生活スタイルは大きく変わった。朝起きたら、新聞を取りに行き、テレビをつけてニュースを視るというスタイルから、スマホでニュースをチェックし、LINEで知人、友人からのメッセージを読み、返信する。離れて住む家族とはビデオ通話で近況報告。そして自宅に居ながらにして大学の授業を受け、仕事のWeb会議に参加……。
これがもう私たちの日常になってしまっている。そしてこの「日常」は世界とつながっているのだ。海外の知人から、時差はあるものの、目の前でおこっていることがライブで伝わってくる。事件、事故のような必要に迫られたものだけでなく、以前なら通信費が心配で「非常識」とされたような日常の話題、ペットや趣味などのことが、距離感なく伝え合える。もはや情報は国境の壁をいともたやすく飛び越えてくるようになったのだ。
ITの普及があり、さらに新型コロナウィルス(COVID19)による世界の混乱を経験し、生活習慣の一部までもが変わってしまった。こうなればかつての常識は失われてしまったのではないだろうか、と想いつつ、いざ世界に出てみると、以前にも増して、世界の「常識」を意識することの重要性が大きくなっていることを思い知った。
ボディ・ランゲージ、ジェスチャーなど、もう古いのでは、と思ったが、SNSで伝統のジェスチャーを紹介する投稿動画があったり、コミュニケーション・ツールのひとつとして紹介されていたりする。彼らは何気ない投稿動画のなかに、自然にジェスチャーをまじえている。本書で、あらためてそれらを掲載したのはそのためだ。
そしてなんと、そういったジェスチャーを、LINEのオリジナル・スタンプにしている人も出てきた。そこで面白いのは、そのジェスチャーの意味が共有できる地域を超えて、ワールド・ワイドで使えるように申請すると、そう簡単には許可が出ないということだ。例えば、握り拳の腕をイラストにして「がんばって!」の意味で使いたいと申請しても、世界には、これを性的な意味、暴力の意味として捉える地域があるので登録できない。
国境の壁はなくなっても、「文化」「常識」に壁は確固としてあるのだ。海外の人が隣りに居るような感覚で接することができるようになったからこそ、ちょっとしたしぐさが相手を不愉快にする事態になりかねない。SNSやニュース映像に映っている彼らの感情をうかがいつつ、そのときの一挙手に注目してみてはいかがだろう。
「常識」は、各地、各民族、各宗教の歴史や文化のもとにあり、それぞれが他の介入をゆるさない価値観、社会を映す鏡のようなものとして有り続けてきた。SNSで容易につながるようになって、その「常識」を他と比較する動きも見られ、グローバルな「常識」が形作られようとしているようだ。
二一世紀に入って四半世紀、いまだに国境は私たちをへだて、国境をめぐって争いがおこり、罪のない常識的にすごしてきた人びとの命が奪われている。
私たちは、たがいの文化、常識について知り、そのルーツと歴史に敬意をもって接することが大事だと思う。自分の常識を押しつけず、自分の常識が通じないことがあることを自覚し、ときには自分の中にある常識を修正する謙虚さをもつことが必要だ。
そうした思いで、世界の人びとと広大な常識・非常識の世界地図を歩いてみよう。
「はじめに」より
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