ひとつの国の運命が、その地名のなかに予言されていることがある。
ヨーロッパの中央部に位置し、“Heart of Europe”とよばれるポーランドとは、古スラブ語でポーレ「平地」に由来する。二〇一四年に登場した新型高速列車 Express InterCity Premium は、農作物が豊かに実る平坦な大地を最高時速二五〇キロで疾走する……平和な光景が目に浮かぶ。しかし二〇世紀前半のヨーロッパのように、いくつもの国と国とが国境をせめぎあっていた時代では、起伏のない「平地」とは、地政学的にその国がどこからでも侵入しうるということを意味している。そして実際に……。
一九三九年九月一日、国境を越えて突如攻め込んできたナチス・ドイツ軍、西からは九月一七日にソ連軍の侵攻があって、ポーランドはたった四週間で占領、分割されてしまった。「平原の国」は、一七九五年に次いで二度目の亡国を経験したのである。
日本にとっても、聞き捨てならない、人を食ったような地名がある。
新潟市や秋田市などと姉妹都市となり、友好をアピールするウラジオストクは、ロシアが広大な国土の東端に建設した最大の港湾都市であり、シベリア鉄道の東の起点でもある。しかし、この都市名の意味するところは、「東方を征服せよ」なのである。明治時代の日本人がこの都市名をどう受けとめたか、そのことに少しでも思いをめぐらせれば、日本はやはりロシアと日露戦争を戦わざるをえなかったのだ、という理解も生まれてくるのではないだろうか。
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