三〇〇〇組の中の、少なからぬ人たちが私のところに来られる前に、がんセンターなどのセカンドオピニオン外来を訪ねていました。が、ほとんどの方が「時間とお金の無駄だった」と。意見が、初診病院と同じだったというのです。なぜそうなるか。「ガイドライン」があるからです。ガイドラインとは、たとえば食道がんなら「日本食道学会」が、子宮がんなら「日本婦人科腫瘍学会」が定めた治療指針のことで、法律家にとっての法律のように、医療現場では絶対的基準になっています。ガイドラインには、進行度(=病期)ごとに推奨される治療法が載っているので、目前の患者の進行度と照らし合わせれば、自動的に治療法が決まる仕組みです。これが、どの病院でも同じ意見しか聞けない理由です。
私はこれを「金太郎飴オピニオン」と名付けましたが、含意は二つ。一つは、どれも同じという意。もう一つは、医者たちにはとっても甘い(面白いように仕事が増える)という意味。学会が定めたガイドラインと聞くと、さだめし学問的で高尚なものと思われるでしょうが、指針の根拠となる論文が、降圧剤ディオバン事件に見るように、データが操作されたインチキ論文のオンパレードなのです。結果、具体的指針は医者たちの利益になるように(つまり治療行為が闇雲に増えるように)定められているのです。
そのためでしょう、三〇〇〇組のうち、私から見て妥当と思われる治療方針を提案されていたケースはわずか五パーセント未満。ここから推して、日本のがん患者の九五パーセント以上は、妥当ではない過剰な治療をうけさせられているはずです。
ところが、私の意見を聞いて帰った患者・家族は、全員ではないでしょうが、「抗がん剤はお断りします」「手術はうけません」などと主治医に伝えているようです。それを聞いた主治医はどういう心持ちになるのか。推測させるエピソードがあります。患者・家族が主治医に「近藤先生のセカンドオピニオンをうけたいから、診療情報提供書を書いてほしい」と切り出したときの反応です。
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