大竹 茂木さんと最初にお会いしたのは、私がホスト役をしている写真雑誌の対談に登場していただいたときでしたよね。『意識とはなにか』(ちくま新書)を読んで、この人に写真について語ってもらったら絶対に面白いと思ったんです。
茂木 それ以来、ときどきお目にかかって一緒に飲んだり、人を紹介したり……。
今回読ませていただいた『きみのいる生活』ですが、大竹さんというと「沖縄」のイメージだったのが、いきなりモンゴルのスナネズミとは意表を突かれました。
大竹 まあ、たしかにスナネズミについての本ですが、いわゆるペット本ではなくて、私流というか……可愛らしい写真も入っています(笑)。私は体験を通してものを考えるのにこだわっていて、自分がビビッドに感じたもの、その感じた原因を探っていくのが好きなんです。それが茂木さんの「クオリア(感覚のもつ質感)」の概念とも通じるような気がして。
茂木 エッセイともノンフィクションとも、ジャンルに収まらない本ですよね。 大竹さんの文章全体がアートに近いかんじがします。それも現代アート。
大竹 そう言っていただけるとすごく嬉しいです。文章より写真や現代美術から刺激を受けることは多いし、いつも表現の全体性を考えています。
ふわふわしたものに触りたい
大竹 ネズミって実は、ものすごく人間との関係の歴史が長い生き物ですよね。
茂木 そのわりには、犬とか猫に比べてペット歴は短いと書かれていましたね。
大竹 そう、人間の暮らしのすぐそばにいたわりに、ペットとして飼われるようになったのはごく最近でしょう? 犬や猫なら、ペットとして人間との関係性が確立しているんだけど、ネズミにはそれがない。ケージに入れようとして逃げられたりすると、すごく傷つくんですよ。そのことに自分でも驚きました。
茂木 そう、大竹さんのスナネズミたちは夜になるとケージから出してもらって放牧タイムになるんでしたよね。
逃げると傷つくというのは、嫌われているように思ったということですか?
大竹 というより、ネズミを飼っている自分自身の奇妙さが照らし出されるんですね。犬だったら、逃げたとしても断固として叱るという態度が取れるのに、ネズミだととまどう。だって、ネズミにとっては逃げることに分があるんですから。飼う・飼われる関係の歴史も人間の文化の一部なんだなあ、と実感しました。初めて野生の犬を飼い馴らした人も、こんなとまどいがあったのではないかと。
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