インタビューほか

スナネズミと暮らしてみたら
大竹昭子×茂木健一郎

「本の話」編集部

『きみのいる生活』 (大竹昭子 著)

キスするときは目をつむる

茂木 非常にエモーショナルなひとたちみたいですね、スナネズミって。

大竹 ケージにいる集団を観察すると、ネズミたちの感情が実によく見える。戦争はこうして起こるんだ……と納得したり。生き物が生きるゆえんって、結局、感情なんだなと思ったくらいです。

茂木 脳の理屈から言うと、社会的な動物ほど感情は豊かに発達しやすいんです。

大竹 そうなんですか。

茂木 感情っていうのは、次に何が起こるかわからないという不確実性に対する脳の反応で、個体間の社会的関係が感情の主たる起源となります。大竹さんも書いていらしたけれど、社会生活って、オス同士の争いだとか、一匹いなくなる、あるいは新参者がくるだけでグループのダイナミクスが変わるとかいうことでしょ。より複雑で豊かな感情というのは社会生活を営む中で出てくるんですよ。

大竹 ものを味わうときに目を細めるのにも驚いた。視界を遮断させて味わうの。

茂木 官能の法則でしょ。僕は人間の場合、それを「キス反応」と名づけてます。

大竹 彼らもキスするとき目をつむるんですよ、男同士でも……。父と息子が禁断の愛にめざめてしまって。しょぼくれていたオヤジが、若い息子の回春効果でいきなり元気になって驚きました。

ネズミは人間のご先祖さま!?

茂木 以前、ジャービル(スナネズミの英語名)が脳の研究に使われているという本を読んだことがあります。彼らはカテゴリーの弁別ができるんですよ。ピッチの上がる音を聴かせるときに餌をやり、下がる音のときに軽い電気ショックを与えると、「上がる・下がる」という抽象的概念がスナネズミの脳の中にできるんです。神経細胞が入れ替わって、活動パターンに変化が見られるそうです。

大竹 それは、感じたことがあります。テレビの中でサイレンの音が鳴ると、ネズミが音と共に立ち上がり、ある音程以上になると、耐え切れなくてジャンプしたんです。バンドネオンの音に敏感で、ピアソラのリズムに合わせ首を振る。ダンスの誕生の瞬間を見るようでした。

茂木 スナネズミくんたちは、実はものすごく頭がいい。放牧タイム、遊びタイムのカテゴリーも認識しているんですよ。

 仕事にかかると職人のように一生懸命になり、気配が消えるというのも面白かったな。齧るのは困るけどね。

大竹 必ず左から右に齧るんですよ。最初のモトクロが割り箸袋から作ったふわふわのふとんなんて、感動しました。人間以外の生き物が作ったアートだと。

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きみのいる生活
大竹昭子・著

定価:本体2,095円+税 発売日:2006年06月12日

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