インタビューほか

スナネズミと暮らしてみたら
大竹昭子×茂木健一郎

「本の話」編集部

『きみのいる生活』 (大竹昭子 著)

茂木 ひまわりの種を齧らなくても中が空かどうか見分けるというのも面白い。

大竹 たぶん、臭覚がすごく発達しているんでしょうね。近所から引っ越してきた難民ネズミに、バッグの中の個別包装してある「のど飴」を盗まれましたから。

茂木 においでわかる透視術ですね。

大竹 専門家に言わせると、ネズミの目で見たら、入れない家なんて絶対にないんですって。昔の人間は天井裏からネズミに観察されていると思っていて、悟られないようにいろいろな別名をつけていたけど、実感としてわかりますよ。あのひとたちのほうが、人間をずっとよく観察して知っている。

茂木 考えてみたら、地球においてわれわれの祖先の哺乳類って、ネズミに近いものだったんでしょう? 実は、ご先祖さまなんだね。

 そうそう、思い出したんだけど、彼らの空間認識能力ってすごいんですよ。最近出た論文によると、自分が通った場所の時間経過を何回もシミュレーションするらしい。しかも、逆方向に。たとえば、A地点→B地点→C地点と行ったら、その後、C→B→Aと時間を逆行してシミュレーションするんですって。リアルタイムを圧縮するらしく、十五秒かかったのを一秒くらいに短縮するみたいだけど。

 きっとスナネズミがモンゴルの大草原の下に作っていたという何百室もある地下宮殿でも、頭の中にナビゲーション・システムがあったんでしょうね。

大竹 育児室や食物貯蔵庫もあるという話ですから。そうした空間認識能力がないと生き延びることができなかっただろうし。うちでも放牧のあとに、一度成功した方法では再度試しても絶対に捕まらないから、相当かしこいんです。

茂木 まさに一発学習ですね、生き延びるための。スナネズミを飼っていて気づいた性質はありますか?

大竹 清潔好きですよ。もともとがモンゴルの砂地出身だから水をやる必要がないので、おしっこも濃縮されていて、砂の中で団子状になるんです。それを取り除き、ときどき砂を乾かしてやる。「お風呂」の砂を新しくすると、必ず転げまわったり、滑りこんだりしますね。

茂木 一番風呂みたいなもんだね。

大竹 何でも食べて、ごはんも好きなんだけど、粘りけが口の周りにつくと必死に拭く。何粒かあるごはんを手に持って、一粒ずつはずして食べるしぐさが可愛いですけどね。やはり手を使う動物って、小さなニンゲンみたいで動作が面白い。

茂木 今後、スナネズミ評論家として注目されるようになったら、どうします?

大竹 うーん、スナネズミを主役にした小説でも書こうかなぁ……。

きみのいる生活
大竹昭子・著

定価:本体2,095円+税 発売日:2006年06月12日

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