「これは、女として確かに養われない! 自分でがんばらないかん!」
皆が、のど元まで出て来て呑んだ言葉だった。
「僕、家事ならわりとやるほうですよ」と、飲んでる間、なんなら彼氏候補を名乗りださんばかりだった河井くんですら、振り上げた刃の収めどころに困っている様子だった。
その後、彼女は我が家の便所で怒濤のように吐いた。
女は、クイズだ。
しかし、吐いてこそいるが、彼女の筋は確かに通っていた。人間にはどうしてもできないことがある。そして、それをやらないがためにがむしゃらに頑張れることだってある。その現実に私は深く感心せざるをえなかったのである。
卵焼き事変。
私はその日をそう名付け、女と言う生き物の不思議を考えるとき、いまだに思い出しているのである。
しかし、それとは別に、彼女の酒席のトークはメリハリがあっておもしろかったなあ、なんて思っていたら、あれよあれよと犬山はテレビに出始めた。今は冠番組まで持っているという。あの四谷のスナックの片隅からついにテレビ司会者が出たという驚き。そのうえ宣言した条件をすべて満たした彼氏(失礼、ですかな?)と結婚し、この間など、モルジブに新婚旅行まで行きその様をフェイスブックにあげていたというリア充ぶり。
悔しいので解説なんか引き受けてやるもんかと思ったが、なにしろ私はそのとき夫婦げんかしてメランコリックだったし、つくづく女と言うのは「クイズ」だなあと思っていたころだし、とにかく本人たっての頼みというのでがんばって書こうかな、と思ったのだ。
というのも、以前中目黒の交差点でバッタリ会ったとき、ものすごく目を泳がせてそそくさと逃げて行かれたという変な時間があったからだ。
トラウマか。まあ、みんなの前であんな恥をかかせたので当然かとも思ったが、私は彼女を今は死に絶えつつある私のようなお笑い系コラムニスト(しかもイラストも自分で書くタイプ)の末裔であると思っている。我々に必要なのはネタだ。獅子が我が子をせんじんの谷に突き落とすように、私も先輩として犬山に強烈なネタをぶつけたのである。ようするに「かわいがり」だったのである。
にしてもあの中目黒のひとときが、ずっと気にはなっていたし、あの底意地の悪い観察眼で私はどう見られていたのだろうかと、正直怖くなってきてもいた。
ので、解説の依頼が来たとき、ホッとはしたのである。少なくとも嫌われ男子ではなかったのだろう。
ある意味、私は犬山を同志と感じている。二人ともコラム芸で食べている、誰しもがブログなどで簡単に文章家デビューできる今は希少なプロフェッショナルであるからだ。
犬山よ、お笑いコラムの火を消すな。浅学な俺に女と言う名のクイズの解答をもっと教えてくれ。こっそりでもいい。そしてもう少しイラストうまくなれ。私はいつだってそう思っている。
えー。最後に、これではあまりにも解説のていを成してないので、私なりの嫌われ女子を。
焼肉を網一杯に焼く女ね!
あれはダメ。焦げるでしょ絶対半分は。人数分の枚数焼きなさい。あと、ヘルシーだかなんだかつって野菜焼きを頼む女ね。あれもね、半分以上焦げなかったところを見たことがない。焼肉の網に肉以外のものはのっけなくていいの!
以上! 終わりだこのやろう!
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