次にお勧めするのは、池井戸潤さんです。池井戸作品を初めて買ったのは『下町ロケット』。妻への誕生日プレゼントでしたが、その後、僕が夢中になりました。銀行員をされていたこともあり、金融系の作品が多いですよね。私も「青木建設」在職中は、財務・海外開発を担当していたため、金融機関とお付き合いする機会があった。銀行員の思考回路だとか、ビジネスにおける金融機関の意思決定論理をずいぶんと学びました。その実態が描かれている小説に親しみを感じて、池井戸さんも“作家買い”です。
そのなかでも、『架空通貨』は一風変わった作品だと思います。かつて商社マンで企業の信用調査をしていた男が高校教師になり、教え子の危機を救うために立ち上がります。その過程で、架空の通貨が、ある地域を支配しつつあることに直面するという現実離れしたストーリーなんですが、文章力と登場人物のキャラクターの魅力で、面白く読めたんです。
池井戸作品には、仕事の哲学が描かれることが多いですが、私の持論は「to be needed」――必要とされる人間になれ、です。この言葉を胸に、二十四歳から約三十年間、働いてきました。会社が倒産してしまい、勤務先は変わりましたが、人事でノーと言ったことは一度もありません(笑)。
その時々で誰かに必要とされる人間になることを信条に働いてきましたが、一歩会社を出てからの気分転換、オンからオフへの切り替えのツールが小説でした。片道一時間半、往復三時間という職場への通勤が貴重な読書の時間です。世の中には、いろんなレジャーがありますが、音も出さず、場所も取らず、人の手も借りずに心がリフレッシュできるなんて、読書は素晴らしい趣味だと思います。
お勧めの4冊
・『翔ぶが如く』(全十巻) (司馬遼太郎 著) 文春文庫
・『限りなく透明に近いブルー』 (村上龍 著) 講談社文庫
・『歩兵の本領』 (浅田次郎 著) 講談社文庫
・『架空通貨』 (池井戸潤 著) 講談社文庫
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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