- 2013.07.05
- インタビュー・対談
異色のヒーロー、銀行マン 半沢直樹が日曜夜に大暴れ!
「本の話」編集部
『オレたちバブル入行組』 『オレたち花のバブル組』『民王』 (池井戸潤 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
――半沢はバブル時代の新入社員ですが、お2人とほぼ同世代、バブル期にはどんなイメージをお持ちでしょうか。
福澤 大学体育会ラグビー部から入社したばかりでしたし、あまり実感はないですね。初めメーカーに入社して、その数年後、どうしてもドラマがやりたくてTBSに転職して、その当時はタクシーチケットをたくさん持っていたことくらいでしょうか。
池井戸 就職試験のときに内定が決まってから毎日銀行に呼び出されて拘束されたことはよく覚えています。5、6人のグループに分かれてそのグループに毎日10万円ずつ渡されて、ディズニーランドに行ったり、海水浴に行ったり。要するに他社を受けられないようにするためです。バブルというと皆、反省しきりですが、あれはあれで面白かった。社会というものはちょっと歯車がかみ合うとあそこまで行ってしまう。その頂点を知っているというのは、我々の財産ですね。
タブーに挑戦する企業ドラマ
――バブル崩壊後の銀行という組織のなかで奮闘する半沢は、福澤さんの目にどう映ったのでしょうか。
福澤 彼のように強くありたいですね。それと、妻の花がポイントだと思います。ドラマでは上戸彩さんが演じますが、はっきりものを言い、半沢を困らせる時もあるけど、明るくて彼の精神状態を保っているところがあります。だけど、このドラマを見て元気を出してください、とは言いません。単純に面白いから見てほしい。半沢の強烈なキャラクターは1回みたら、きっとまた見たくなりますよ。
池井戸 言いたいことを言えなくて泣き寝入りしている人は多いでしょうから、半沢が代わりにはっきり言って「やられたら倍返し」、読者にスカッとしていただきたいですね。あまりメッセージ的なことは考えていませんが、働く人はこうあってほしいというのはあります。ひとつは「ひたむきであることと強さ」――まさに半沢のような精神力ですね、そして「優しさ」、それから「賢さ」。こういうことを兼ね備えた人間になれたらいいなと自分自身思っているし、そういう社会人が理想です。半沢はダーティなヒーローですが、性根は腐っていない。言いたい放題やる戦略家で裏から手を回すことも厭わない。だけど、悪い奴じゃない。読者はそういうキャラクターに共感を抱きつつ、あこがれを持ってくれていると思います。このシリーズは銀行を舞台にしていますが、フィクションで、読者に最も身近な企業社会、サラリーマンを主人公にした小説って意外に少ないんですよ。
福澤 企業小説といわれるものはけっこう買って読んだんですが、出来事が羅列してあるだけでストーリーが単調で、人物のキャラが平凡な作品が多かったです。
池井戸 取材が行き届いて、情報として価値のある企業小説もありますが、キャラクターで読ませるものは意外と少ない印象ですね。
――半沢シリーズでいうと、金融庁検査官の黒崎駿一のキャラは際だっていますよね。
池井戸 小説ではオネエ言葉を使いますが、台本ではどうなったんですか。
福澤 片岡愛之助さんがオネエ言葉で演じます。黒崎役は下手な役者ではダメ、格のある俳優でないと。片岡さんがやると、強烈なインパクト出ますね(笑)。
池井戸 それはいいですね。僕の小説を読んで、銀行の実態が本当に小説のままだと思いこむ人がいるんですよ。エンタメとして書いているのに「銀行って怖い」という感想もあったりして。だから、こんな奴、絶対にいないだろうというキャラの黒崎を登場させたんです。これは、銀行業を体験させるためのシミュレーション小説ではありませんよ、と。
福澤 銀行を舞台にすることは、ドラマではめったにありません。正直言うと、基本、当たらない分野なんです。先ず、女性が敬遠しますから。銀行という難しそうな世界を見たくないんでしょう。そういう人は見なくて結構と割り切って面白さを追求したほうが、かえって見てくれる気もします。タブーに挑戦! いままではじかれていた世界を見てほしいです。このドラマ、とにかく面白いですから。池井戸先生の小説世界の面白さを多くの人に知らせたいですね。そして、先生は他局に渡さない(笑)。
――さて、文春文庫から池井戸さんの『民王』が刊行されました。この作品も映像化したら面白そうですね。
福澤 文庫ですぐ読みます。将来、池井戸先生の小説を映画にしたいという夢もあります。
池井戸 ありがとうございます。実は僕は自分の作品がミュージカルにならないかなあと思っているんです(笑)。
オレたちバブル入行組
発売日:2013年08月02日
オレたち花のバブル組
発売日:2013年08月02日
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