- 2014.06.11
- インタビュー・対談
著者 × 書店員トリオ ネタバレ座談会──千早 茜・内田俊明(八重洲ブックセンター)・新井見枝香(三省堂書店)・川俣めぐみ(紀伊國屋書店)
「本の話」編集部
『男ともだち』 (千早 茜 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
知ってしまったら嫌えなくなる
新井 女ともだちの話になるけど、元同級生で今は主婦の美穂って、いい。最初でてきたとき、なにこの女、ぜったい仲良くなれないって思ったけど。
川俣 実は、けっこう仲良くなれる相手(笑)。
新井 あるよね、そういうこと。
千早 美穂って、わりあい計算高くて、いいんだよね。
新井 美穂にとっての「あんちゃん」を知ったときに、なんか急にいいかもって思っちゃったんだよね。血がつながらないけど、いつでも近くにいてくれた、もういない誰かが美穂って子にいたんだ、って。みんな何かがあって、知ってしまったらもう嫌えなくなるんだよね。
川俣 そうだねえ。
新井 真司もひどい男だけど、なにか彼の物語があるのかもしれない。ハセオだって――なぜハセオってあんな男になっちゃったんだろう。
川俣 なんでかなあ。
新井 学生時代から来るもの拒まずで、いつ他人が家にいても平気だし、神名に恋人がいてもなんの邪念もなくよかったな、って言えるって。
千早 邪念、それはわかんない。ひょっとすると、あるかもよ(笑)。
新井 ハセオと神名が一緒に露月さんのバーへ行って、ふたりともあかちゃんみたいな顔してるっていわれるところ、好き。
千早 安心しちゃってた。ふたりとも普段はわりと孤独だから。人と違うとか、受け入れてもらえないとか、彼らには世の中に対して負い目のようなものがあるんじゃないかな。
新井 なにか足りないものがあるんじゃないかってね。平気で浮気ができるタイプって会話に出てくる。
千早 浮気には罪悪感がなくても、罪悪感がないことへの罪悪感はある。
新井 わたしは分かるんだ。でももしそうじゃない、浮気とかぜったい厭だって人が読んだら、彼らのことどう見るのかなって思ったりもした。
千早 連載の第1回、2回あたりは、このヒロインが受け入れられるのかどうか心配でしたね。性格きついし、やってることむちゃくちゃだし。
内田 性格問題ありとはぜんぜん思わなかったですけどね。
新井 結婚して自分の旦那が浮気とか平気だったら、こういうひとたちって、めっちゃ脅威だよね。
千早 なにこのひと、みたいなね。
内田 彼氏ができたら潔癖じゃなきゃってタイプにはいやだろうね。
千早 みとめないぞ、って思うんじゃないかな。
新井 なんだこいつらって。でも、正直言って、どんなに好きなひとがいたってムラッとくることなんて、あるじゃん!
千早 あるよ! テレビ見てたって、かっこいい→ムラッってことあるし。
新井 でも神名って、仕事に対する考えかたとかすごく真摯で共感できる入口がたくさんあるから、不倫がたとえ許せなくてもきらいになれないってところはあると思う。
内田 神名って、仕事に対してすごく誠実で、目標をもって、それに向かって一歩一歩進んでる。それも魅力あるよね。
川俣 『男ともだち』は、お仕事小説としても読める。神名の仕事・イラストに対する強い想いに読んでいてグッときた。だから神名のいろんなことが許せちゃうのかも。
千早 最初、ほんとにお仕事小説を、という依頼だったんです。でも仕事する上で細部は必要だよね、ということで脱線してこうなって。女友達もそれほど予定していなかったのに、出したら友情も育まれて(笑)。
川俣 そうだ。ハセオ、ともだちでもいいけど、恋人でもいいかなって実は思ったよ。
千早 え、ハセオが恋人でいいんですか? ぜったい浮気するよ。
内田 ぜったいするね。
千早 川俣さんを止めたい。でもおそらくハセオの好みだと思う。
川俣 そうかなあ。ふふ。
新井 そういえば、神名の学生時代の話で、酔った美穂を自宅にはこぶとき、華奢なのに、胸や二の腕が「水風船のように柔らかくて」どきどきしたというくだりがあるじゃない。あれ、ちょっとめぐたん連想した。
千早 確かに。細いのに、やわらかいのがいいんだよね。
――『男ともだち』の登場人物全員の中でも、ハセオがいいんですか?
川俣 そう。ハセオ。
千早 ちょっといいかな、ではなく。
川俣 恋愛するなら、ハセオが、いいです。
新井 ハセオとは男ともだちがいちばん幸せだよ?
川俣 それはわかるんだけど、もしハセオに会っちゃったら、恋愛しちゃうかも。
千早 うーん。じつは、ハセオのモデルみたいな男ともだちがいるんですけど、その子がつきあっていた女子が川俣さんに似てるんですよ。
川俣 えー(爆笑)!
内田 衝撃だなあ、それ。
川俣 もし本気になってくれたら、ハセオって、すごく良い彼氏になりそうじゃないですか。ハセオが本気で恋愛したらどうなるか気になるし。
千早 ハセオに恋愛ができるのかな。うーん、心配でならなくなってきた。
この座談会に登場の
新井見枝香さん(三省堂書店)と 千早茜さんの
変則往復書簡 はこちら>>
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。