月報原稿は、諸田玲子さんの「女が読む向田邦子」とともに掲載され、お2人の捉え方の対比の面白さとあいまって評判を呼んだ。今でも、向田全集としては2度目の刊行であるにもかかわらず、健康的な“オオタ売れ”をしつづけている。
太田さんがはじめて向田邦子の愛読者であると全国的に印象付けたのは、2005年にNHKテレビ「知るを楽しむ」向田邦子編の講師を4回にわたってつとめた時である。妹・和子さんとの対談も交えたその番組で、太田さんは向田作品のどこが如何にすばらしいかを語りつくしている。
一度読んだ本を読み返すことはあまりしない太田さんが、テレビで一度とことん語りつくした向田邦子論に、全作品を再読して再挑戦したのが、月報だったのだ。
向田邦子が命を終えて30年目となるこの夏、月報の原稿と「知るを楽しむ」の原稿、それに太田さんが選んだ、向田作品の小説、エッセイ、映像シーンのべスト10とその向田作品の原文を同時収載したこの本が、書店に並ぶ。『向田邦子の陽射し』という書名をつけ、「日本は、向田邦子のように生きてきた。」という帯の惹句を本文中から選んだのは、太田さん自身だ。
この本は、現在・未来の日本という国にとって、向田作品はどんな意味を持つのか、自分のこれからの生き方にとって、どんな光彩を放つのかを、“太田総理”的な大上段に振りかざす論調を抑えて、静かに強く訴えかける。そして、太田さんならではの向田論もさることながら、この本を読んでいると、世界一向田邦子が好きな男に、向田邦子を時を経て再読する幸福のおすそ分けを手渡ししてもらっているようで、嬉しくなる。これまで何人もの方々が向田邦子を論じてきたけれど、これほど“ドキドキする”向田論は初めてだ。
教科書でしか向田邦子を読んだことのない次世代の読者にとっては、太田選のお薦め作品が全部読めて、この1冊で向田通になれる最高の入門書でもある。
早朝テレビでお馴染みのフレーズを拝借すると、「これから向田邦子をお読みになる方も、今まで読んでこられた方も」面白くて深い本。そのうえ、全集を向田邦子と同じ病名で闘病中だった桑田佳祐さんに贈りつづけた、なんて初耳話も新原稿としてこっそり挿入されている。
では、突然ですが、最後にもう1問!?
太田選の小説ベスト1は「かわうそ」。
では、エッセイのベスト1は何でしょう。
正解はCMの後……、ではなく、最寄の書店でご覧ください。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。